モノクロネガフィルムの現像
これから始めようという方や、始めて間もないという方のための、フィルム現像の基本的な処理です。
35ミリのロールフィルムを題材に、ステンレス製の一般的なタンクとリールを用いてご紹介します。
ボクはLPLのステンレスタンクとリールを使っていますので、このページでの例もこの製品に準じます。
作業の流れ自体は人によっていろいろ違いはありますので、あくまでも基本的な流れの例とお考え下さい。
モノクロネガフィルムの現像は、おそらく皆さんが思っているより遙かに簡単で、ちょっと練習すれば誰でも出来るようになりますし、さしてお金もかかりません。
何本かやれば、お店に500円払うよりずっと良い仕上がりを得ることが出来るようになりますし、何より大切な現像のコントロールは自分でやらないことにはどうにもなりません。
使用する薬品については
こちらのページでも簡単にご案内しています。
現像液は出来るだけ一般的な物を最初は選んだ方がよいと思います。
また、定着液は出来ればイルフォードの「ハイパムフィクサー」(非硬膜タイプの迅速定着液)を選んでください。
用具については
こちらのページでもご案内しています。
下準備
現像しようとするフィルム、現像タンク、リール、フィルムピッカー、ハサミなどを用意します。また、現像液、停止液、定着液といった薬品類も準備します。
現像液や定着液は、保存液を薄めて使うタイプ、保存液をそのまま使うタイプなどありますので、製品の説明に従って準備します。
停止液は酢酸を薄めて使うのが一般的ですが、たいていの場合は普通の水道水でも大丈夫です(ボクは水道水です)。
希釈
薄めて使うタイプの薬品の場合、「50倍に薄める」といったら原液1に対して49の水という意味ですので、計量が容易ならばそうします。
ですが、実際のところ49も50もあまり変わりませんので、10ccの原液を500ccの水で薄めて合計510ccにしてもなんら問題はないでしょう。
同じように、「1:1の希釈」とか「希釈率1+1」といったら、原液1に対して水1を混ぜるという意味です。
500ccの使用液を作る際、250ccの原液と250ccの水、ですね。
「1+2」は原液1に対して水2で合計3。1+9は原液1に対して水9で合計10になります。
現像液には、こうして「原液を希釈して」使うものが多くあります。
もともとは粉状の薬品を水に溶いて原液を作る事が多いですが、この状態を「保存液」と呼び、希釈するなどした後の実際に処理に使う状態を「使用液」と呼びます。もちろん、原液(保存液)のままで使用する場合もあります。
英語では「保存液」の事を「stock solution」と言いますので、原液を「stock」と表記している資料もよく見かけます。
酸化しやすい現像液も、保存液はある程度の期間保存して置いても痛みにくい程度の濃さになっています。
しかし、水でこれを希釈してしまうと酸化しやすくなるため、保存があまり利きません。
そこで、希釈して作った現像液の使用液は1回使い捨てが原則です。
フィルムの巻き取り
未現像のフィルムが剥き出しになる部分、つまりリールにフィルムを巻き取り、タンクに入れる作業は、微細な光でもフィルムが感光してしまうので、完全な暗室を得られる方は暗室で、そうでない方はダークバッグという遮光性のバッグの中で、手探りで行います。
フィルムのベロを切る
まず、「フィルムピッカー」という道具を使って、パトローネの中に巻き戻されたフィルムの先端を引っ張り出します。
やり方はピッカーの説明書きにありますが、最初にピッカーのベロをパトローネのスリットに差し込み、1番目のつまみをスライドさせて押し込みます。
次にパトローネの芯をフィルムを巻き込む方向に回転させます。
するとフィルムの先端がピッカーのベロを弾いてパチンという音がしますので、そこで2番目のつまみをスライドさせて押し込みます。あとはピッカーをゆっくり引っ張れば、フィルムが挟まって出てきます。



続いて、引っ張り出したフィルムのリーダー部分をハサミで直角に切り落とします。
パーフォレーションとパーフォレーションの間で綺麗に切りましょう。


切り方が雑だとリールにセットする時やりにくいので丁寧に。
切り落としたリーダー部分は定着液のテストなどにも使えるので、とっておいてもいいでしょう。
ここまでの作業は明室でOKです。
フィルムをリールに巻く
ここから先は完全暗室、またはダークバッグの中で行います。
手探りの作業なので、ここが最初の難関、またおそらくは最後の難関ですが、慣れるとまったく何て事のない作業です。
最初はなかなか上手くできなかったり手のひらが汗だらけになって焦りますが大丈夫。
いくつかコツのようなものもありますが、基本的には指先が感触を覚えたりといった慣れの問題です。
はやく現像してみたい気持ちはわかりますが、フィルム1本か2本を練習用にして、明るいところで繰り返しやってみましょう。
実際の作業は目で見ることが出来ない手探りですが、明るいところで練習する事で仕組みを理解しやすく、また、なにか指先に変な手応えがあったとき、何が原因かを見つけやすくなるはずです。
まず、明るいところで仕組みを見ながら練習して、次に目を閉じてやってみます。
何かおかしな手応えがあったら目を開けて、何が起こったのかを観察しましょう。
ここでは、パトローネから引っ張り出しながらリールに巻いていく様子を紹介しますが、先にパトローネを開けてフィルムを取りだしてから巻く方法もあります(ボクは後者です)。
慣れると作業が早いのですが、手に汗握る感じだとフィルムが汗だらけになりますし、手を離せばフィルムがバラバラとほどけてしまいますので慣れが要るかもしれませんね。
フィルムの先端をリールにとめる
リールの芯にフィルムの先端を差し込み、爪にパーフォレーションを引っかけてから巻き始めます。
左の画像で、リールの芯の右側に見える2本の爪を使います。
リールの内側の幅はフィルムの横幅より狭いですから、フィルムを少したわませて差し込みます。
たわませすぎると芯の差し込み口に入れにくいですから加減して。
初めのうちは、この部分が一番難しいようです。また、ここがきっちり出来ないと後が巻けません。
コツは、リールの内側に入れたフィルムの先端を真っ直ぐ差し込み口に向かわせようとしないで、長目に入れて芯の上に預け、手前に引きながらストンと差し込み口に落とし込む感じでしょうか。
下の画像で、まずフィルムの先端をリールの中に入れ、いったん芯を通り越して奥まで差し込みます。
それから、フィルムをリールの芯に押し当てるように、つまり画像で言うと下向きに軽く力を掛けながら手前に引いてくると、差し込み口のところに先端がストンとはまるわけです。



あらかじめ、リールの芯の差し込み口の位置を確認しておくと作業がスムースです。
同じメーカーのリールなら、螺旋の終端部分と差し込み口の位置関係は同じですから、手探りでも容易に見つけられます。
ボクの使っているLPLのリールですと、リールの螺旋の終端を左手の人差し指で触っている状態でなら、普通に右からフィルムを入れてきてちょうど良い位置になりますので、毎回まったく同じ角度でリールを持つための手がかりにしています。上の画像でも人差し指がリールの終端を触ってますね。
フィルムの先端を差し込んだら、フィルムを下に少し折り曲げるようにして、リールの芯にある爪にフィルムのパーフォレーションを引っかけます。
左右の爪それぞれが、しっかりパーフォレーションに引っかかるのを確認しましょう。
この時に、フィルムの差し込み方が斜めになっていたりすると、左右の爪が違う列の穴を拾ってしまい、いきなりまっすぐ巻けなくなります。
きっちりと真っ直ぐにはまっていないといけません。
そして少し引っ張るテンションを掛けたまま1巻きします。
フィルムをリールに巻き取っていく
フィルムの先端はリールの芯の爪に引っかけてあるだけですから、軽く引っ張るテンションを掛けていないと外れてしまいます。
そこで、最初の3回転くらいは、リールを左手で回しながらフィルムを引っ張って巻き取っていく感じが良いです。
(右利きと仮定して)左手にあるリールと、右手にあるフィルムとで、軽く綱引きしている状態ですね。
つまり、リールでフィルムを引っ張るような感じになります。
いくらか巻けばもう外れませんから、ここでいったん引っ張る力を抜き、逆にフィルムをリールに押し込む力を掛けます。
上の画像で言えば、右手で持っているフィルムを、左のリールに向かって押し込むわけ。
すると、少しフィルムが中に入っていくはずです。
きつく締まっていた巻き取りが緩むからですね。
初心者の方は、ずっと引っ張る力を掛けながら巻いてしまう事が多いようなのですが、理想はフィルムを押し込んでいき、フィルムがリールの中で緩く巻かれている状態です。


画像は、左がフィルムを引っ張りながら巻いた状態です。
フィルムがリールの中心、つまり内側のワイヤーに押しつけられています。
リールに巻き取られているフィルムの内側が現像される画像の有る方、つまり乳剤面ですが、こちらがワイヤーに押しつけられているわけですね。
右の画像は、フィルムをリールに向かって押し込みながら巻いた様子です。
フィルムはリールの外側のワイヤーに押しつけられています。
フィルムを押し込みながら巻くと、フィルムの外側がリールのワイヤーに接しますので、画像面側は現像液の出入りがスムースになり、現像ムラを避けやすくなります。
とはいえ、慣れると平気ではあるのですが、フィルムを押し込む力でリールを回転させながら巻いていく方法は、ちょっと難しいかも知れません。
左手でリールを回転させてフィルムを引っ張りながら、少し巻いては右手でフィルムを押し込み、少し巻いては押し込み、という感じで良いと思います。
少し巻いて押し込むとき、スムースにフィルムが前後すれば、綺麗に巻けている証拠です。
フィルムがリールの溝を跳び越えてしまっていたりすると、軽く押したり引いたりが出来ませんので、フィルムを押し込んでみるのは綺麗に巻けているかどうかの確認の意味もあります。
スムースに押したり引いたりが出来ず、引っかかりがあるようでしたら、途中でフィルムがリールの溝を外れてしまっています。
リールを逆転させて少しフィルムをはずし、巻き直します。
フィルムを巻いたリールをタンクに入れる
フィルムを最後の方までリールに巻いたら、ハサミで切ります。
あんまりパトローネから離れたところで切ると、場合によっては最後の撮影コマを切ってしまうかも知れません。
逆にパトローネの縁ギリギリで切ろうとすると、なにせ手探りですからパトローネのスリット部分の植毛を切ってしまい、そのカスがフィルムにかかってしまうこともありそうです。
などなど、ちょっと注意が必要ですが、この部分は別に綺麗な直角でなくてもなんら問題ないので、注意するといってもハサミで指を切らない様に注意、でしょうか。


今回、いちおう見本としてハサミで切っていますが、フィルムを力任せに引っ張ると芯から外れて出てきます(あまり褒められた方法ではないですが)。
また、パーフォレーション部分をうまく使えば、手でフィルムを千切る事も意外と簡単ですが、ハサミで切るのが無難でしょうね。
先にパトローネを開けてフィルムを剥き出しにしてからリールに巻く方法だと、簡単に芯から外すことが出来ます。リールに巻く作業自体に慣れてきたら、その方が全体として楽で良いかも知れません。
いずれにしても、フィルムの最後をパトローネ側から切り離したら、リールに最後まで巻き取り、現像タンクに納めます。
2本用や4本用タンクで複数のフィルムを同時に現像する場合、次のフィルムをリールに巻きます。
最後のリールをタンクに納めたらタンクにフタをします。


これで一段落、ダークバッグからタンクを出しても(暗室での作業なら灯りをつけても)大丈夫です。
温度調整
現像は薬品と金属の化学反応です。
反応を起こす薬品の温度によって、化学反応が進むスピードは異なってきますから、同じ時間現像したとしても、温度が違うと現像量が変わってしまいます。
そのため、現像液の温度は処理を通して指定されている値に合わせておく必要があります。
現像の温度は、ある程度低くても高くても、処理にかかる時間が変化するだけですが、あまり低すぎては化学反応に支障があり、また高すぎるとフィルムが痛みやすくなってしまいます。
通常、18℃から26℃程度の範囲内で指定されているはずです。
現像温度と現像時間の組み合わせを事前に確認しましょう。
フィルムや現像液の説明書には、何種類かの温度と現像時間の組み合わせが書かれています。
あまりに現像時間が短いと繰り返し精度を得るのが難しいですし、現像ムラを起こしやすくなります。そうした場合は低めの温度と長い時間の組み合わせを選びます。
ボクは5分未満の現像時間は絶対に使いませんし、可能な限り8分から10分くらいの手頃な時間になる温度を選択しています。
(あまり長い現像時間は面倒だし途中で飽きちゃうのでやっぱり選びません)。
また、冬季で室温が低い、夏期で室温が高い場合などは、温度調整のしやすさから処理温度を選ぶ事も考えられるでしょう。
もちろん、1年通して同じ温度が繰り返し精度としては望ましいですが。
まず、平たく面積のある容器(深めのバットや大きめの洗面器など)に処理温度に合わせた水を張ります。現像処理中の保温用です。
現像処理中は、現像タンク、各種薬品の温度を一定に保つため、基本的にはこの保温用の水に容器ごと浸けておきます。
処理薬品(現像液・停止液・定着液等)をメスカップに用意し、温度を調整し、保温用の水を張った容器にメスカップごと入れておきます。
薬品の温度が処理温度とはなれていた場合、メスカップごと軽く湯煎する、冷たい水に浸けるなどして調整します。
この時、ステンレス製のメスカップですと熱が伝わりやすいので、温度調整が非常にスピーディーに出来ますが、プラスチック製だとなかなか大変です。
温度計が複数あると便利ですが、1本しか無い場合、違う薬品の温度を測る前には必ず洗います。特に、定着液や停止液が付着した温度計を現像液に入れてはいけません。
フィルムを入れた現像タンクも、保温用の水に浸けて温度を処理温度に近付けておきます。
あくまでも肩まで、うっかりタンク内に水が入らないようにね。
各薬液のメスカップは順番に取りやすい位置に置きましょう。
取っ手の向きを利き腕側手前にするなど細かい気配りをしておくと、後の手順がスムースに出来ます。
室温が処理温度とほとんど変わらない場合、停止液や定着液のメスカップは最初に温度調整さえすれば、後は保温用の水に入れておかなくても、室温に放置で大丈夫です。
許容範囲はプラスマイナス2℃くらいまででしょうか。ただし、現像液の温度だけは出来るだけ正確に。
理想を言うと、エアコンで室温自体を処理温度に合わせてしまうのがいちばんなのですけどね。
液温は、上げるより下げる方が時間がかかるので、特に夏場はクーラーの効いた部屋で作業できると最高です。
次のページへ続きます
page 1
2 3
Home