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標準の印画紙
では、ネガフィルム上のコントラストはどの程度が適正なのでしょうか。
ネガのコントラストは「被写体に影響され」、「プリントに影響する」わけですから、その両方の都合を鑑みたうえで、フィルム自身の都合も合わせて決めなくてはなりません。

ひとつには、印画紙のコントラストに合うネガのコントラスト、という考え方です。 ネガフィルムの素ヌケ部分であるfb+fを印画紙の最大黒に当てはめて、印画紙のギリギリ白になるネガフィルムの濃さまで、というもの。
先に述べたように、印画紙には異なるコントラストを持つ号数というものがありますから、例えば3号、あるいは2号という風に印画紙側を先に決めてしまえば、それに合うネガフィルムのコントラストが決まります。
また、被写体側にも、一般的な景色や風景が相当するであろう標準的なコントラストというのを設定すれば、その標準被写体を標準印画紙に結びつけるコントラストがネガの標準コントラストで、それを得るのが標準現像である、という風に考えられます。

また、ネガのコントラストを上げる、つまり現像を長くすると、粒子が荒れたり階調が滑らかでなくなるといったデメリットも発生しますので、特に粒状性が問題になる小さなフィルム(35ミリフィルムなど)では、あまりネガのコントラストを上げたくありません。
また、印画紙では、号数紙は一般的に2号から4号が売られていますし、多階調紙でも2が中間という位置づけですので、やはり標準印画紙は2号から3号、35ミリフィルムでは3号、中判や大判では2号、というのが妥当でしょう。

左の図は、富士写真フィルム社の印画紙「フジブロWP」の特性曲線図です。
横軸は相対露光量といって、印画紙に当たった光の量を示しています。 左の方が露光量が少なく、右の方が露光量が多いという図です。
縦軸は現像後の画像の濃度です。
右にいくほど露光量が多いので、現像後の画像は濃くなります。
つまり、写真で言えば、グラフの左の方がハイライト、右の方がシャドウ、ということになりますね。
グラフに3本の線があるのは、2号、3号、4号それぞれを示しているからです。
赤い線で示されている2号が、もっとも角度が緩やかですね。 3号、4号と号数が上がるほど、角度が急になっていきます。 グラフで、角度が急な方がコントラストが高いというわけです。
どの号でも、濃度がもっとも低いところは濃度0、つまり印画紙のもともとの白の状態なのは言うまでもありませんが、もっとも濃くなるところも、濃度2.0のちょっと上あたりで、ほとんど変わりません。
しかし、この真っ白からもっとも濃い黒までを得るために必要な、露光量の幅が異なります。 2号よりも3号、3号よりも4号で、より少ない露光量の差で同じ印画紙の濃度差を得られるわけです。
この様に、印画紙が白から黒までの画像の濃さの幅を出すために要求する露光量の差、つまりネガ上の画像の差というのは、印画紙の都合で決まってきます。
逆に言えば、ネガ上のコントラストの都合で、それに組み合わせる印画紙の号数というのを選べるわけですが、ここではあくまでも、印画紙側でまず標準を定めているわけです。

標準的な被写体
さて、印画紙の号数で標準が決まり、ネガのコントラストをそれに対応させるという段取りですから、ネガのコントラストに「影響を与える」被写体のコントラストを次に標準化しなくてはいけません。
そのためには、実際に撮影する被写体の明るさの差を片っ端から調べて、標準モデルをつくらなくてはなりませんが、有り難いことに、ここに代表的なものがひとつあります。 それが「ゾーンスケール」です。
「ゾーンシステム」という言葉を聞いたことがあるかも知れませんが、これはまさに、今やろうとしている事、すなわち「被写体のコントラスト、ネガのコントラスト、印画紙のコントラストを結びつける」ための考え方、仕組みです。
ここではシステム全体に踏み込むことはしませんが、ゾーンシステムにおける「ゾーン・レンジ」という考え方を拝借します。

ゾーンスケール
ゾーン 0印画紙では完全な黒測光値 -5EV
ゾーン 1真っ黒よりちょっとだけ明るい黒。質感は見られない。測光値 -4EV
ゾーン 2質感はあるけれど、暗くて詳細な事は読みとりにくい測光値 -3EV
ゾーン 3暗い部分だけれどちゃんと詳細が見て取れる測光値 -2EV
ゾーン 4風景や人物写真での標準的な影の部分測光値 -1EV
ゾーン 5中間グレー。いわゆる平均反射率18%の部分測光値 ±0EV
ゾーン 6肌に優しく日が当たっている感じ。日の当たる雪景のシャドウ部測光値 +1EV
ゾーン 7一般的景色で詳細を識別できるハイライト部分測光値 +2EV
ゾーン 8わずかに質感を保つハイライト部分測光値 +3EV
ゾーン 9輝く白の表面。質感を伴わないハイライト測光値 +4EV
ゾーン 10光源。印画紙での完全白測光値 +5EV

被写体の明るさ、印画紙上の濃さの様子を、0から10まで11段階の「ゾーン」として分類してあります。 各「ゾーン」は写真用語でなじみ深い「EV」に相当しますので、たいへん使い易くなっています。
これが標準的な被写体のモデルです。
もちろん、これはあくまでも標準モデルですから、実際にはゾーン1に相当する部分は無いとか、ゾーン9ほど明るいところは無いというように、被写体の状態は様々です。
しかし、かなりの確立で適応する、標準であることは間違いありません。

さて、この様に、ゾーンスケールは11段階に分かれていますが、ゾーン0は真っ暗・真っ黒ですし、ゾーン10は真っ白です。 したがって、ゾーン0とゾーン10は濃さの変化を持っておらず、濃さ・明るさの変化があるのはゾーン1からゾーン9までの9段階、つまり9EVです。
この、9EVをもって、「ダイナミックレンジが9EV」である、と言います。
また、ゾーン1は非常に暗くてよくわからない部分ですし、ゾーン9も明るすぎてよくわからない部分です。したがって写真上、質感などを表現できるのはさらに内側のゾーン2からゾーン8までの7段階となり、これを「有効被写体輝度域」が7EVである、と称します。

さて、これ以上踏み込むと、そのままゾーンシステムの解説になってしまいますのでこの辺にして、とりあえず、標準的な被写体のダイナミックレンジは9EV、という事にして、次へ進みましょう。

この部分の話をすると、実際の被写体にはダイナミックレンジが8EVしかなかったとか7EVしか無かったという風にクレームされることがあるのですが、ここで話しているのはあくまでも標準モデルです。実際のダイナミックレンジが標準と異なっていたら、フィルム現像を変えてネガのコントラストを調整するのがゾーンシステムです。
もちろん、ここでは踏み込まず、標準モデルを拝借するに留めます。

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