モノクロ印画紙
印画紙も、フィルムと同様だんだんと種類も減ってきてしまいましたが、まだまだ選択の余地はあれこれあります。 とはいえ、物珍しさであれこれ手を出していてはいつまでたっても基本的な技術や知識が身に付きません。 標準的な感剤と薬品とを、さまざまな事を理解できるまで使い倒してみましょう。 (同じ事言ってますが)
印画紙にはいくつか分類の方法があり、用語や呼び方もさまざまですが、多くは昔の話がそのままだったりして、少々混乱を招くこともありそうです。
ここではシンプルに、次のように分類してみたいと思います。

号数紙と多階調紙
印画紙には「号数」というのがあります。 これは、印画紙のコントラストをあらわすもので、号数が低い方がコントラストが低く、つまり軟調、号数が高い方がコントラストが高く硬調です。
どうして異なる「号」が必要かというと、ネガフィルム上のネガ画像の濃さの幅、つまり薄いところと濃いところの差は、被写体上にあった明るさの差やフィルム現像によってマチマチだからです。
そのネガ上の画像を印画紙に投影してプリントした際、ネガ上のコントラストが高いとプリントも高コントラストになり、ネガ上のコントラストが低いとプリントも低コントラストになります。
しかし、モノクロ写真は黒から白までの階調が非常に重要ですから、最終出力であるプリントでは出来るだけ好ましいコントラストを得なくてはなりません。
そこで、ネガのコントラストが高ければ、コントラストの低い印画紙を組み合わせて相殺し、逆にコントラストの低いネガに対しては、コントラストの高い印画紙を組み合わせてプリントするわけです。
号数紙と多階調紙では、この「号」の違いを得る方法が異なります。
ちなみに、「号」の事を英語では「グレード」と呼び、号数紙は「グレーデッド」です。 多階調紙は「マルチグレード」「マルチコントラスト」または「バリグレード(バリアブルグレード)」「バリコントラスト(バリアブルコントラスト)」などで、それぞれ「MG」「MC」「VG」「VC」などと略して表記されることもありますが、現在ではみな同じ仕組みです。
レジンコート紙とファイバーベース紙
印画紙は名前の通り「紙」で、素材はパルプ、コットンなどあります。 その紙の支持体の上に、銀を含んだ感光材料が塗ってあるわけです。
出来るだけ綺麗な白が印画紙には望ましいので、紙の支持体と感光材料の乳剤層の間に、バライタ層をいうのを挟んだ構造が一般的なので、ファイバーベース紙(略してFB紙)を「バライタ紙」とも呼びます。
また、処理の迅速化のために紙の表面をコーティングして薬液が支持体に染み込まないよう加工した、「レジンコート紙(RC紙)」というのが作られました。
よく、保存性はFB紙が高く、RC紙は耐久性が無いと言われますが、銀画像の耐久性が変わるわけではありません。レジンコートの耐久年数が50年ほどではないかと言われているからですが、これもはっきりした事は言えず、現在のRC紙は保存性という点で避けるべき物でもないようです。
カラー写真のプリントで100年プリントなんてなのがありますが、あれだってレジンコート紙なのです。 初期のRC紙が耐久性に劣っていたため、いまだにそうした事を大きく気にされるようなのですが、近年かなり進歩している事は間違いありません。
もっとも、正しく処理するのが難しいFB紙を中途半端に使っていたら、簡単に正しい処理が出来るRC紙にも耐久性で劣ってしまうことも考えられますけれどね。
いずれにしても、写真では、プリント自体がアーカイバルであるという発想には限度があると思います。 FB紙は100年保つなんていう言われ方にしても、保管状況がほとんどの要素を占めてしまうのです。プリントを保存するには、飾ったりしてたらダメなんですから。
作品販売や歴史的資料、美術館での収蔵などでは大問題ですが、個人レベルでプリント作成を楽しむアマチュアでは、あまり気にしてもしょうがないとボク個人的には思っています。

色調
あまり選択肢が無くなってきましたが、印画紙には「純黒調」「温黒調」といった種類分けもあります。 「純黒調」は文字通り黒が黒々しているもので、「温黒調」は茶色がかった温かみのある黒という意味です。
印画紙がもともとそうした色調が出やすいように作られているわけですが、色調は現像液でもある程度コントロールできます。 一般に、「温黒調」の印画紙の方がこうした現像液での調整が良く利くようになっています。

光沢
他、印画紙には表面の艶の出方でも種類分けされます。 光沢(グロッシー)、半光沢(セミグロス)、無光沢(マット)といったものです。 大きな写真用品店の暗室用品売場には、印画紙のプリント見本が並べられてることがあるので、見比べて選ぶと良いでしょう。
見本を見比べられない方のために少し個人的な見解(好み)を申し上げておくと、FB紙のマットはマット過ぎてしまい、グロッシーは嫌みもなく好感が持てますので、FB紙ではグロッシーが良いかと思います。
いっぽう、RCのグロッシーはテカテカして安っぽく見えてしまいます。 イルフォード社の製品ですと、RC紙にはグロッシー、パール(半光沢)、サテン(マット)があるのですが、中間のパールが手頃なのではないかと思いますし、ボク自身も愛用しています。

総じて、FB紙の方がRC紙より上、号数紙の方が多階調紙よりも上。つまり、FBの号数紙がベストという言われ方をしてしまうと思うのですが、ボクはこれには同意しかねます。
ボク自身、FBの号数紙で好きな製品があって愛用していましたが、それが生産終了になってからはほとんど全て多階調紙を使っていますし、使うようになって大いに考えが変わりました。
また、美術的にFB紙の方が良いというのもよく分かりますが、RC紙がそれほどダメだともボクは考えていません。 正直、下手なFB紙のプリントより綺麗なRC紙のプリントというのをたくさん見ていますし、こういう言い方はどうかとも思いますが、10年早いよ、というFB紙のプリントもお見受けします。 プリント作成の技術がさしたるレベルではないのに、RC紙はダメだ、多階調はダメだと言ってしまう事が多いのではないでしょうか。
初心者の方、あるいは中級くらいまでの方でしたらば、RCの多階調紙でプリントの練習や研究をなさることをボクは強くお勧めします。
そして、いよいよ作品作りだという段階になって、FB紙や号数紙に取りかかればよいのではないでしょうか。

具体的な製品では、イルフォード社のMultigrade IV RC Deluxをお勧めしておきます。 サイズラインナップや表面仕上げも豊富で、日本国内でも入手が容易ですし、世界標準と言ってよい製品です。 同シリーズのFB紙もあって感度やコントラストに統一感があり、移行も比較的容易です。
他には、オリエンタルのVC-PRIIはグロッシーのみですが価格が安く魅力的です。 富士のフジブロバリグレードWPでは2種類の光沢を選べます。


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