モノクロ写真の引き伸ばしプリント
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露光時間と号数をテストする
印画紙はフィルムと同じ感光材料ですので、光を当てる量を変えると現像後の画像の濃さが変わります。
光の量は、これもフィルムと同じで、時間(カメラで言うシャッター速度)と絞りで調整します。
ただし、カメラでの撮影は立体像を撮影するのに対して、プリントでは平面から平面へ出来るだけシャープに投影するのが目的です。
絞りを開けて背景をぼかす、というような事はありません。
では、撮影と同じように出来るだけ絞って深度を稼いだ方がシャープかというと、ネガや印画紙の平面性などによるピント位置の精度低下をカバーする意味はありますが、あくまでも平面から平面ですからあまり重要ではなく、光学的な事情で絞りすぎるとかえってシャープさが無くなってしまうこともあります。
ベストな絞り値は、基本的に引き伸ばしレンズの光学性能が最大限に発揮される絞り値であって、ほとんどのレンズでは、開放から2〜3段絞ったところになるようです。
50ミリレンズに多い開放f2.8でしたらば、f5.6からf8です。
実際、ボクがテストしたところでは、ボクのニッコール50ミリはf5.6でもっともシャープな像を結び、通常のプリントで実用的には差は見られないだろうという範囲はf4からf11の間でした。
そこで、レンズの絞りは開放から2〜3段絞り、露光時間で印画紙に当てる光の量を調整します。
3段絞っても露光時間が短すぎて作業しにくい場合には、もう1段絞っても特に問題はないでしょう。
印画紙にもフィルムと同じように感度があります。
撮影と違って光源(引き伸ばし電球)の明るさは常に同じですので、ネガの状態が一定であれば、同じ感度の印画紙に同じ引き伸ばし倍率なら露光時間はだいたい同じくらいに収まるわけですが、ネガの状態によってやはりバラツキが出てきます。
また、プリントでは露光時間の他に、号数をあわせて決めなくてはなりません。
これは、ネガ上の濃度の差、つまりシャドウ部分とハイライト部分の濃さの差が、撮影した被写体(シーン)に含まれる明るさ差によってマチマチだからで、それを印画紙に投影して現像したとき、黒から白まで丁度良く配置されるようにしなくてはならないからです。
印画紙の号数
一般に、2号から3号の号数が標準とされますが、号数が小さいほど印画紙は軟調で、号数が高いほど硬調です。
言い換えると、ネガ上の濃さの差が大きい(つまり硬調な)場合、軟調な号数の印画紙を組み合わせ、逆にネガ上の濃さの差が小さい(つまり軟調な)場合、硬調な号数の印画紙を組み合わせる事になります。
号数印画紙では2号印画紙は2号、3号印画紙は3号と、わけて作られていますが、多階調印画紙では、1種類で00号から5号まで、フィルターを変えることで幅広く調整することが出来ます。
ここでは、多階調印画紙を使っているという前提で話を進めていきます。
引き伸ばし機の種類(散光式か集散光式か)やフィルムのフォーマット、あるいは人それぞれのスタイルによって異なってきますが、35ミリフィルムでは3号を標準と考えていいと思います。
しかし、標準が3号だという場合、まずはそれよりも軟調になる2号フィルターを引き伸ばし機にセットして、テスト露光をしてみます。
テスト露光は、段階露光という方法で行います。
暗室内の通常灯を消して、セーフライトだけにします。
段階露光
例として、露光時間が10秒くらいになるだろうという前提にしてみます。
印画紙をイーゼルにセットして、1枚の印画紙に7秒、8.4秒、10秒、12秒、14秒の露光を、縞になるように与えてみます。
露光時間のコントロールは引き伸ばしタイマーで管理します。
まず印画紙全体に7秒の露光を行います。
ついで、遮光性のある紙か板で印画紙の5分の1程を覆い、1.4秒の露光をします。
つまり、印画紙の5分の4に、先の7秒プラス1.4秒で計8.4秒の露光をしたことになりますね。
印画紙を覆う範囲を広くしていく要領で遮光板をさらに5分の1ほどずらし、1.6秒露光します。
最初に覆った部分は7秒のまま、次に覆った部分は8.4秒、残りの5分の3は計10秒となりました。
同じ要領で遮光板をずらし2秒、さらにずらして最後の5分の1に2秒。
これで、1枚の印画紙に7秒、8.4秒、10秒、12秒、14秒の露光を与えた状態になります。
| 露光時間 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 合計 |
| 7秒 | 1.4秒 | 1.6秒 | 2秒 | 2秒 |
| A | 7秒 | 遮光 | 7秒 |
| B | + 1.4秒 | 遮光 | 8.4秒 |
| C | + 1.6秒 | 遮光 | 10秒 |
| D | + 2秒 | 遮光 | 12秒 |
| E | + 2秒 | 14秒 |
この印画紙を現像すると、5分の1ずつの幅で濃さの違う、縞々のプリントが出来上がります。
露光時間の検証
明るい場所で縞々のテストプリントを見て、5段階の中で適切と思われる濃さの部分があるかどうか確かめます。
上の例で言うと、Cにあたる真ん中の部分が適切に見えたら、露光時間は10秒。
Dが適切に見えたら、露光時間は12秒です。
DとEの中間くらいが良いように思えたら、あいだを採って13秒という事にしておきましょう。
どれも適切に見えなかったら、つまり、7秒露光のAでも濃すぎる、あるいは14秒露光のEでも薄すぎる場合、目安の露光時間を変えて再度同じテストをします。
Aでも濃すぎた場合、一番長い露光時間が7秒にならないような露光時間のセットを考えてテストしますし、Eでも薄すぎた場合には、一番短い露光時間が14秒より長いセットで行います。
もっとも、今回のように7秒でも露光が多すぎるというのは全体の露光時間として短すぎ、作業がし難いので、レンズの絞りをもう1段絞るなどした方が良いと思います。
絞りを1段絞ると光の量は半分になりますので、先ほど7秒だったものは14秒に等しくなります。人それぞれではありますが、8x10印画紙くらいの大きさでしたらば、10秒前後から20秒弱くらいの露光時間が作業はし易いと思いますので、そのあたりを目安にしてみましょう。
また、仮にもっとも露光時間が短かったAの、7秒が適切に思えた場合、あるいは逆に、もっとも露光時間が長かったEの14秒が適切に思えた場合には、出来れば少しずらして再度テストをする方が望ましいです。
Eがベストに思えた場合には、12、14、17、20、24と言った露光時間でしょうか。
というのは、Aが適切に見えた場合、それより短い露光時間の方がより良いかもしれないのに、この段階では確認していないからです。
Eの場合は逆に、それより長い露光時間がより良いかもしれないのです。
段階露光によるテストでは、一番短い時間と、一番長い時間をのぞいた範囲でベストが見つかるようにします。
それはさておき、ここでは仮に、12秒が適切に見えた、という事にして次に進みます。
新しい印画紙をイーゼルにセットして、12秒露光し、現像します。
プリントの出来上がりはどうでしょうか。
コントラストの検証
この段階では、まだテストプリントを作っているところですので、完成プリントとは違う見方をします。
先ほど、標準が3号であるならそれより軟調になる2号フィルターでテストをすると書きましたが、それには理由があります。
テストプリントは完成プリントとは違う役割があり、特に最初に作るテストプリントは、ネガ上にある情報を出来るだけ全部見るために作るのだと考えてください。
この段階では、シャドウの一番暗い部分が真っ黒にならず、ハイライトのもっとも明るい部分が真っ白にならないような、軟調なプリントを作るのが第一段階です。
今回の例では、12秒の露光でシャドウもハイライトも目一杯になっていないプリントになれば、まずは成功です。
どちらかが目一杯になってしまっていたら調整します。
ハイライトが真っ白になってしまっていたら、露光時間を長くして再度プリントしてみます。
しかし同時にシャドウが真っ黒になっていたら、そもそも硬調過ぎるわけですので、今度はフィルターを1号にしてテストをやり直します。
シャドウが真っ黒になってしまっていたら、露光時間を短くして再度プリントしますが、ここでもやはり、同時にハイライトも真っ白でしたらそもそもが硬調過ぎるわけなので、フィルターの号数を小さくします。
シャドウもハイライトも目一杯にならず、つまり真っ黒も真っ白も画面内に無い状態でしたらば、ひとまず第一段階のテストプリントは出来上がりです。
あまりにもシャドウが薄くハイライトが濃い、つまり軟調すぎるようでしたら、逆にフィルターの号数を上げてテストをやり直した方が良いでしょう。
軟調なテストプリントが出来たら、それを元に写真の内容を検討します。
このテストプリントには、画面内のもっとも暗い部分がどこで、そこにはどれくらいディテールや質感があるのかが示されています。
同時に、画面内のもっとも明るい部分がどこで、そこにはどれくらいディテールや質感があるのかも分かります。
それらを検討して、完成プリントではどの部分をもっとも濃く、またどれくらい濃くして良いのか、どの部分をもっとも明るく、またどれくらい明るく(つまり薄く)して良いのかを考えます。
多くの人が、こうした軟調なテストプリントを作ることをせずに本番プリントへ進んでしまいます。
そのため、せっかくネガが持っている階調を十分に引き出すことを出来ていなかったり、逆に質感もディテールもないディープシャドウやハイライトを中途半端な濃さでプリントに出してしまったりするものです。
まず最初に、軟調なテストプリントによって、プリントしようとするネガフィルムの全ての情報を見ることは非常に大切な過程ですし、上達の早道と言えます。
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