C-41処理
余談でホントに余計な事を書いてしまいましたが、本題に戻って。
というわけで、カラーネガフィルムの現像は、ほぼ統一された規格に基づいています。
それが一般に「C-41」と呼ばれる現像処理です。
これはコダックの規格で、他には富士のCN-16などありますがほぼ同じですし、相互に乗り換えてもほとんど変わらない(厳密には若干の違いが出る)結果を得られますので、ひとまとめにC-41と呼べば間に合います。
また実際、カラーネガフィルムの事をC-41フィルムと呼ぶ習慣すらある程です。
ちなみに、カラーリバーサルフィルムの現像処理はE-6、ですよね。
先に述べたような理由で、現像処理はとある一定の条件に沿って行われる事が前提になっています。
しかし、発色現像の後の処理、つまり漂白や定着、さらには水洗といった部分には自由度がありますので、C-41処理にも派生型が存在します。
基本形はC-41で、発色現像、漂白、水洗、定着、水洗、安定剤の順で処理が行われます。
水洗を省く事で処理時間を短縮したC-41Bは、定着液の処理時間を短くし、水洗の代わりに安定剤3浴で済ます方法です。
フィルムを洗わずに、残留する薬品の影響を安定剤によってカバーしていますので、この安定剤は旧来のC-41用の安定剤とは種類が異なります。
C-41RAはさらに処理の迅速化を目的にした処理工程で、漂白や定着に使われる薬品はC-41Bよりも強力で短時間で処理が完了します。
45分や30分にとどまらず、15分で同時プリントまでやってしまう超迅速処理はこうした強引な方法で実現されるわけです。現在では、ほとんどの一般向けミニラボがこの"B"や"RA"処理を採用しているはずです。
水洗を行わないので水資源の節約にもなりますが、ネガの保存性を懸念する声もあるようですね。
余談
モノクロでは一般的にはあまり使われないので馴染みがないのが漂白。モノクロでも、上級テクニックではかなり頻繁に使うのですけどね。
漂白という呼び方がやや勘違いしやすいのですが、繰り返しになりますがカラー現像で言っている漂白というのは、定着処理の際に全ての銀を除去出来るよう、現像された銀を元に戻す処理です。ホントは元に戻すと言ってしまうと正確ではないのですが、定着液で除去出来るという意味で元に戻していると考えてください。
誤解を招かないように上手く説明するのが難しいので、ここはさらっと流して置いてくださいね。
漂白は、英語ではブリーチ(Bleach)と言い、これはご家庭の洗濯や洗剤でも同じように使っている言葉なので馴染みがあると思います。もちろん違う薬品ですけど。
ちなみに定着はフィックス(Fix)で、定着液はフィクサー(Fixer)。先ほど出てきた漂白と定着を同時に行う処理液は漂白定着液、英語ではBleach Fixですが、両方を合わせた造語でブリックス(Blix)と俗に呼ばれます。
カラーネガ現像は単純か、複雑か
カラーネガ現像について書かれたアマチュアのホームページなどで、ときどき、カラーネガ現像は2液式なのでモノクロよりある意味簡単、という言い方を目にします。
これは誤りか、誤りというのが言い過ぎなら詭弁でしょう(どっちもどっちか)。
確かに、ナニワカラーキットNなどは「発色現像」「漂白定着」の2浴に続いて水洗すれば完了ですし、モノクロネガの現像をメーカーなどの推奨条件で行うなら、「現像」「停止」「定着」「予備水洗」「水洗促進剤」「水洗」といった工程になります。
しかし、これまでにも述べたように、カラーネガ現像は発色現像の後に漂白、水洗、定着、水洗というのが本来の工程であり、「漂白定着」は処理を簡略化するための方法でしかなく、ロスも多いのです。実際、漂白液と定着液を一緒にするのは薬品の性格上なかなかスムーズではなくて、安定性に欠ける面があります。本来、別々になら簡単に処理出来るだけの量を、一緒になりにくい薬品同士の相性を合わせるためのロスに阻まれてこなす事が出来ません。
ですので、先のモノクロネガの処理工程と同じくらいの感覚できっちりわけるなら、「発色現像」「停止・水洗」「漂白」「水洗」「定着」「水洗」、そして「安定剤」というのが加わります。
逆に、モノクロネガの現像工程をナニワカラーキットNくらいの感覚で単純化するなら、これも「現像」「定着」そして水洗です。停止は必須ではありませんし、水洗促進剤もです。
モノクロで、現像と定着の間に停止というのを入れるのは、現像を速やかに停めるためと、定着液の処理能力を落とさないよう、定着液に現像液を持ち込まないようにするためなのですが、この事はカラー現像でも同じように言えます。
ナニワカラーキットNの指定のように、発色現像の後に水洗を挟まずに漂白定着を行えば、現像液が持ち込まれて、ただでさえ効率の悪い漂白定着液の処理能力が落ちてしまいます。
もちろん、キットでは指定の処理本数をこなせるだけの現像液と漂白定着液のセットになっていますから、それでも構いませんが、言い換えれば、現像液を持ち込んでダメになる分の漂白定着成分をあらかじめ余計に持っているだけなのです。つまり、効率の悪い処理のために無駄に薬品を消費しているのです。
ナニワカラーキットNでも、発色現像の後に停止浴を挟むと漂白定着液の処理可能本数(キャパシティ)を増やす事が出来ます。もちろん、いくら漂白定着液のキャパシティを増やしても、キットの現像液が無くなってしまえばまたセットで買う事になるのであまり意味がありませんが、少なくとも、速やかに現像を停止出来る、現像ムラをいくらか減らせる、といったメリットがありますよ。発色現像液がフィルムや現像リールに付いたまま漂白定着液をタンクに入れると、それが行き渡る過程で現像ムラが発生しやすいですからね。
カラーネガ現像は簡単か、難しいか
先に述べたように、モノクロネガ現像に比べて単純か複雑かという点では、漂白という工程が入る分、カラーネガ現像は必ず複雑になります。
しかし、簡単か難しいかという意味では、けっして難しいと言う事はありません。
なぜなら、どんなに工程が多くなっても、それぞれの工程でやる事自体は変わらないからです。
発色現像も、漂白も、定着も、どれも液をタンクに注いで攪拌し、また排出するだけの繰り返しです。
なにもモノクロ現像と違うところはありません。
単純な工程を積み重ねるだけの事です。
では、なぜカラーネガ現像がモノクロネガ現像より難しいと考えられているのかというと、これはC-41処理というのが温度や時間の管理に厳格であると思われているからです。
実際、先に書いたように、色ごとに別々の層に分かれているカラーフィルムでは、現像液が染み込んだり染み込んでいく間に疲労する分なども結果に影響してきますので、モノクロネガの現像のような自由度はありません。
しかし、少々の誤差なら大した問題にはなりません。
現に、ナニワカラーキットNでは、処理温度38度と30度の2種類の処理時間が指定されていて、どちらで大して変わらない結果を得られるはずです。
ボク自身は24度で現像した事もあります。
C-41処理では、基本になっている処理温度は37.8度で、誤差は±0.15度とされています。現像時間は3分15秒です。ナニワカラーキットNと同じですね。
なるほど、±0.15度なんて、アマチュアの現像環境では不可能です。3分15秒も短すぎて繰り返し精度を得るのは難しいです。
しかし、考えてみてください。これらC-41現像の処理マニュアルは、あくまでも自動現像機による処理を前提にして書かれているのです。
そういう設定が出来る自動現像機が相手だから、37.8度とか、±0.15度といった高い精度を要求出来るのですね。
その精度が守られないと、たしかに厳密には結果に違いが出てしまうかもしれませんが、なにもかにもがブチ壊しになるようなものではありません。
批判を覚悟して思い切って言えば、相手が機械で文句を言わないから、要求したいように要求しているだけ、くらいに考えても構いません。
なんて書くと、ナニワカラーキットNなどアマチュア用のホビー処理剤でも処理条件は厳しく書かれている、と反論されそうですね。
これらホビー処理剤の指定条件がどれくらいアバウトな物かは後でも出てきますが、厳しい指定条件はある意味言い逃れでもあると言う事を考えてもいいでしょう。
説明書に記載する条件を厳しくすれば、結果責任をかなり回避出来てしまうのが処理薬品というものでもあるのです。
これくらいは大丈夫、という書き方は、仮に大丈夫だったとしてもメーカーは書きづらいものです。
したがって、どれくらいの誤差を寛容出来るかというのは、ユーザー側の主観で判断するしかありません。
商業目的で精緻なカラー再現が必要なら、自家現像はしないでしょうし、商業写真であれば一般ユーザー向けのミニラボすら使いません。現像管理が厳格なプロラボを使うのが当たり前でしょう。
アマチュアユーザーが自家処理をしようと考えるときには、必ず、自分に必要な現像精度というのを認識しておくべきです。
そう言ってはみなさん躊躇してしまうかも知れないので、ボクの主観で言うならば、常識的な範囲で温度管理が出来れば、つまりモノクロネガ現像と同じくらいの感覚で温度管理、時間管理が出来れば、実用上とくに問題なくカラーネガ現像は出来ます。
これは、自家現像ネガから自家プリントをやっている経験からも断言出来ます。
自家プリントをしていると、機械によるプリントや自動補正の効くフィルムスキャンと違ってネガの状態が直接自分に降りかかってきますから、そのへんには非常に敏感になるものです。
ただし、モノクロでも結果に影響するような雑な管理だと、カラーネガではモノクロより始末に困るのは確かです。モノクロの方が、プリント時の自由度が高いからでしょうね
ちなみに、加えて言うならば、現像液の疲労といった要因も結果には大きく影響しますが、ミニラボなどの自動現像機では補充システムといって、使った分に応じて新たな現像液を少量ずつ加えていく方法でコストを下げています。
使った分と言っても、どれだけの銀を処理したかを逐一測る事は出来ませんから、基本的には何枚撮りのフィルムを何本処理したかで補充をします。
撮影済みフィルムは、撮影内容によって現像されるべき度合いにバラツキがあります。晴の日の屋外など露光量の多いネガや、夜中で真っ暗みたいな素ヌケに近いネガなど、さまざまありますが、それらを現像すると、現像液の疲労度合いには大きな差が出ます。
そうしたバラツキは長いスパンでは薬液の比重などを監視して調整されますが、だいたいこれくらいだろうという統計から補充量を決めているのが実際です。
もし、常に新鮮な現像液を使って、たとえば現像液は1回使い捨てにするなどで処理するならば、アマチュアユーザーがマニュアル現像した方が、管理のテキトーなミニラボで現像するより精度が高い事も十分あり得ます。
そしてこれもよく言われる事ですが、管理のずさんなミニラボというのはたくさんあるのです。
余談
C-41系処理の基準現像温度は37.8度です。アマチュア用のキットなどでは丸めて38度ですね。
37.8度、なんて半端な数値を聞くと、すごく厳密だなぁと思いこみ勝ちですが、これは摂氏37.8度だと言う事を思い返してください。
華氏では、これは単純に100度なのです。
華氏100度という区切りのいい数字を基準処理温度にして処理工程を設計し、世界的に広めるため摂氏に直して書いたら37.8度になった。というわけです。
な〜んだ、と思いませんか。
同様に、液体の量や重さなどでも妙に精密そうな半端な数値を目にする事がありますが、その正体はガロンやポンドをメートル法に直したら半端な数字になった、というのが結構多いですね。
現像処理は、それでもまぁ、ある程度の正確さが求められます。
しかしそれに続く、漂白、定着といった処理は、モノクロネガの処理と同じくらい正確なら構いませんし、言い換えれば、モノクロネガの処理と同じくらい大雑把で構いません。
もっとも、現像が正確で、その後は大雑把というのはモノクロも同じですけどね。
モノクロと違う注意点としては、カラーの色素は強い酸性で失われてしまうという事で、そのため使用する処理液のpHには制限があります。
もっとも、現像液を自家調合するのでない限り、pH計が必要だというほどのものではありません。現像液のpHはかなり厳密ですが、これも市販の製品を使う分にはいちいち測る必要はありません。
漂白は、機械現像用の指定では温度も時間も細かく指定されていますが、コダックの資料でも、マニュアル現像の場合はかなりの誤差を許しています、定着も同様です。
というのは、漂白不足というのはあっても漂白過多というのは特に無いからです。
漂白処理は、現像によって出来上がった銀画像を元に戻す処理でしたが、全部戻すのが目的であって、途中の微妙なところで止めるわけじゃないですからね。
定着でも同じで、不要な銀を除去する処理ですが、モノクロで定着処理を極端に長くすると、本来除去すべきではない画像部分の銀まで失う事があり得る一方、カラーの場合は全部除去するのが目的なのですから構いません。
しかし、カラー画像の色素はそれほど頑丈な物ではありませんから、無駄に長い漂白処理や定着処理をして画像にダメージを与えるリスクを負う必要はありませんけどね。
常識の範囲内なら問題なし、というわけです。
要は、どれくらいクリティカルな結果精度を求めているか、という話なのです。
現像正確さ世界大会(そんなの無いけど)で上位入賞を目指すのか、それとも普通にプリントするのに困らない範囲であればOKなのか、という話でしょう。
そして、じゃぁその辺のテキトーなミニラボに現像に出したらクリティカルな結果精度を得られるかというと、それもやや疑問だと言う事も考えて良いでしょう。
一見すると超厳格なC-41処理の規定は、あくまでもそれが可能な現像機械の設定の事を言っているのであって、マニュアル現像でも必ずそれをやれとは言ってない。
ついでに書くと、コダックの公式資料でも、ロータリー現像(JOBOタンクなど)で、現像機の設定温度が38度まで上げられない場合は、現像時間を延長して調整するように書かれています。
なにがなんでも38度で3分15秒、っていうワケじゃないんですよね。
ちなみにボクは、ミニラボ用の薬品を使っても現像温度30度で5分30秒が標準現像時間です。3分15秒なんて短すぎて繰り返し精度に自信が持てません。こちとら機械じゃないんですから。
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