現像液の使用パターン
現像液だけではなく、漂白、定着でもある意味同じような事は言えるのですが、考え方は異なりますし重要度が高いのは現像液部分なので、特にここを取り上げてみます。
この考え方はカラーネガ現像に限らずモノクロネガ現像の現像液でも同じですが、現像による調整の方がコストより重要なモノクロに対して、カラーネガ現像では基本的に同一の結果を求めますので、特にコスト面が気になるという事は言えると思います。
現像液の使用パターンというのは、用意されている現像液で、どのようにして処理本数を決めるのかという事でもあります。
ワンショット
現像液などを、1回使い捨てにすることを「ワンショット」と呼んでいます。
もっとも贅沢な処理液の使用方法で、もっとも繰り返し精度が高い方法です。
文字通り、1回使った現像液は全て破棄してしまい、次回はまた新しい現像液を使うというもの。
常に同じ状態の新鮮な現像液を使いますから、安心確実です。
例えば、普通のステンレスタンクで35ミリフィルムを現像すると、1本用タンクですと使用液量が250mlですので、フィルム1本の現像に250mlを使い、それは破棄するという事になります。
仮に現像液の価格が1リットルあたり2800円(ナニワカラーキットN)だとすると、フィルム1本分の現像液はトータルで700円。非常に高価なものについてしまいます。
キットに含まれる漂白定着液は処理本数を全然こなさないので元気なまま残ってしまい劣化を待つばかりとなりますし、これではちょっと非現実的ですね。
しかしミニラボ用の薬品で、しかもサードパーティ製ですと、現像液1リットルあたりの単価は150円にしかなりません。フィルム1本分はわずか38円ほど。
漂白や定着の分を足しても余裕で100円を切ります。
ミニラボ用薬品を使うなら、この方法をお勧めします。
希釈現像
モノクロですと、現像液の原液を水で1:1などに薄めて使う事が多いですが、これはあくまでも現像液の性格を変更するものです。現像液を薄める事で、現像の進行を遅くしたり、現像液が疲労しやすくなる事で鮮鋭度を高めたり、逆に微粒子化を抑えたりといった違いが生まれるからです。
ただ単に安く上がるから薄める、というのは間違った考え方。
カラーネガ現像でも、こうした希釈現像をする方がいらっしゃいますが、ボクはちょっと微妙だなぁと思います。現像液の希釈使用はpHをかなり変えてしまいますし、先に述べたようにカラー現像は現像液の疲労度合いに影響されやすいですからね。
ちなみに、希釈した現像液は酸化しやすいので基本的にワンショットでの使用になります。
現像液分のコスト的には単純に原液ワンショットの半分ですが、漂白や定着も希釈して良いかというとそうではないので、全体のコストがまるまる半分になるわけではありません。
現像液と漂白定着液のセット販売になっているナニワカラーキットNだと、単純に半分で、1本あたりの現像コストが350円ってところですね。意味はなさそうです。
逆に現像液単価の安いミニラボ用薬品ですと、希釈してコストをさらに下げる必要があるとも思えませんし、デメリットの方が遙かに大きいように思います。
つまり、カラーネガ現像ではあまり意味がない方法、って事でしょう。
補充サイクル
もっとも処理単価を下げられる方法で、ミニラボや現像所で行われている方法です。
C-41系処理は、基本的にはこの手法を前提にしていると言っても構いません。
補充使用は、文字通り、使用した分に応じた新しい液を足していくという方法です。
例えば、現像タンクが10リットルのサイズでも5リットルのサイズでも構いませんが、35ミリの36枚撮りを1本現像したら、25mlの新鮮な補充液(現像液)を継ぎ足す、というものです。
もちろん、現像液には乾いたフィルムを入れ、湿ったフィルムが次の工程に移っていきますので、現像タンクの中の現像液はそれだけ減りますから、その補充の意味もあります。
現像によって疲労した分を補うために、補充に使うのはタンク内の使用液よりも強い現像液という事になります。
また、フィルムによって持ち出される量が補充量よりも少ないのであれば、タンクから余る分を取り除いて入れ替える事になります。
先の、36枚撮り1本あたり25mlというのは、だいたいC-41処理の基本に近い値です。
つまり、この処理方法がちゃんと機能するのであれば、フィルム1本あたりの現像液コストは25ml分。一般ユーザーでも買えるミニラボ用の現像液は1リットル150円と先ほど書きましたが、単純計算で3.8円ほどにしかなりませんね。
漂白と定着も同じように規定の補充サイクルを使うと、積み上げていっても12〜13円ほどでフィルム1本を現像出来てしまいます。
しかし、一般のアマチュアユーザーが、販売ロットの大きなミニラボ用の薬品を購入して、しかも使用量が極めて少ない補充サイクルを使うと、とてつもない量のフィルムを現像する事が出来てしまいます。
前にも書きましたが、現像液はフィルム1600本分です。
使わないでいれば空気酸化などによって劣化していくのが薬品ですから、ある程度の期間内に使い切らないと全てダメになってしまいます。
また、これもすでに書きましたが、正確な補充量を決めるのは非常に難しい物ですし、実際には現像タンク内の薬品の状態を監視しながら調整する必要があり、設備のない一般ユーザーには困難だと思います。
使用液と補充液
薬品のタイプのところでも書きましたが、ミニラボ用として売られている薬品は補充サイクル用で、基本的には「補充液」という形になります。
一般に、実際に現像に使う薬品の状態を「使用液」と言い、補充液と使用液は似ていますが中身が若干違います。
現像液は、現像する事によって現像主薬が疲労するので、それを補うために現像主薬を足す必要がありますが、それ以外にpHが下がりますのでその調整、そして現像の副産物として老廃物が溜まってきますから、その分の調整をしなくてはなりません。
この老廃物は現像を抑制する働きがあり、新鮮な使用液にも最初から必要量が含まれています。
補充液では、疲労した分を補う現像主薬、pHを調整するアルカリ剤などが含まれますが、現像を抑制する薬品は現像によって老廃物として増えている事を見越して入れないでおきます。
こうした微妙なバランスで補充サイクルというのは回るのです。
微妙なバランスというのを言い換えると、理想的な形で補充をしていくというのは難しいのです。
単純に使った分だけ補充液を補充というのでは、どこかで誤差が限度を超えてしまいます。
そのため、薬品の状態をチェックしつつ、足りない物を補い余っている物を抑えるなどの調整をしなくてはならないわけです。
また、補充液として作られている薬品を使用液として現像に使う場合には注意が必要です。
補充液は現像液よりも強力で、現像を若干抑える老廃物に相当する成分も入っていません。
分かりやすく言うと、新鮮な使用液は、新鮮な補充液よりも疲労した状態なのです。
そこで、補充液から使う場合には、やや疲労したような状態に調整する必要があります。
そのために、「スターター」と呼ばれる液が用意されていますので、購入の際にはこれも合わせて入手するようにします。
ちなみに、ちゃんとしたスターターを使わず別の物で補充液を調整しても、概ね実用に困らない程度の現像は十分可能なんですが、スターター自体は安価なので、なにもリスクを負う必要は無いと思います。
なお、ミニラボなどの現像機械では大きなタンクの中をフィルムが通過していきますが、一般ユーザーが小型丸タンク(普通の現像タンクのこと)で現像する場合、保存ビンをタンクと考えて補充を繰り返します。
しかし、小型丸タンク現像では保存ビンから現像液をメスカップに移し、温度調整をし、タンクに注ぎ、攪拌を繰り返すと言ったように、非常に空気酸化による劣化が起きやすい工程になりますので、ミニラボ用の補充サイクルに指定されているのと同じ補充量では絶対にまわらないはずです。
正直ボクは、カラーネガ現像に関しては、この補充サイクルはなかなか出来ないと思いますよ。
フルに補充サイクルを回せば1本の現像コストが13円。なんていうのもまた、捕らぬ狸の皮算用ですね。現実はそんなに甘くありません。
もしやるなら、しばらく実際に運用してみて、現像結果をチェックしつつ適度な補充量というのを見つけるしかないでしょうね。
使い回し
ホビー用処理液のところで書きましたが、同じ使用液を繰り返し使う方法です。
ナニワカラーキットNのように、補充システムでもなく、実際に存在する処理液の量が少ないのに、記載の処理可能本数が多い場合にはこの方法を採っています。
なにしろ、処理可能本数(ナニワカラーキットNの場合は20本)が一度に浸かるだけの液量がないのですから、液を使い回さないとならないのは当たり前ですね。
35ミリフィルムを普通のステンレスタンクで現像するなら1リットルだと1度に4本。つまり20本を現像するには5回転しなくちゃなりません。
現像液は現像する事によって疲労します。現像主薬は酸化して弱くなり、pHは下がり、老廃物も溜まります。
したがって現像力は落ちてしまいますから、2回目は現像時間を長くし、3回目はさらに長く、というように、現像時間で調整していく必要があります。
とはいえ、ではどれくらいの時間を延長すればいいかというのは、正確には求める事が出来ません。
何度か書きましたが、フィルムは撮影状態によって現像されるべき銀の量が違い、現像液の疲労度合いも違うからです。
しかし、その程度ならあるいは誤差の範囲内と言えなくもありませんが、根本的な問題として、現像液の空気酸化が挙げられます。
どういう事かというと、実際に現像に使う現像液は、保存用のビンからメスカップなどに移され、現像タンクに注がれ、何度も攪拌され、またメスカップに戻るなど、非常にたくさんの空気と接触し混ざり合いますよね。
これにより、使用済みの現像液というのは実際に現像によって疲労するだけでなく、空気による酸化でどんどん劣化していってしまうのです。
そんなわけで、使用済みの現像液というのは痛んでいる上にさらにとても痛みやすく、状態が不安定で、あまり信用出来るものではありません。
単純に時間を延長すれば解決する、というものでも無いのです。
ナニワカラーキットNの使用液の保存期間が極端に短いのは、こうした無理のある方法、「使い回し」を前提として処理可能本数を多く謳っているからでしょう。
ボクは時間延長による現像調整があまり悪影響を与えないモノクロネガ現像であっても、現像液の使い回し、つまり繰り返し使用はほとんどしませんし、人には絶対に勧めません。カラーネガ現像でも同様です。いや、カラーネガならなおさら、と言った方がいいかな。
現像の精度をそれほど求めず、なおかつ現像液指定の処理本数のそれなりの数を短期間でこなすなら構わないと思いますが、そうでなければちょっとお勧めは出来ない方法ですね。
とはいえ、ナニワカラーキットNでは処理液は1リットルしか作れないのですから、もし贅沢にワンショット現像すると35ミリフィルムで4本しか現像出来ません。1本あたり700円にもなってしまいます。
となれば、2回目、3回目と、ある程度は誤差の範囲と諦めて、時間を延長しながら使い回していくしかありません。しかしそれが4回、5回となると、ちょっとどうかなぁと思ってしまいます。
実際のところ、ボクの経験ではこの繰り返し使用、しかも一度に立て続けに現像した場合でも、初回の新鮮な現像液と後半の現像とでは現像の出来に差がありました。プリント時に負担になる程の差が、です。
残念ながら、5回もの使い回しは無理。つまり処理本数20本は少々誇大でしょうね。
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