漂白液、定着液
現像液の使い方のパターンには、先述のようにワンショット、希釈、補充、使い回しなどがあり、理想はワンショット、補充はちょっと難しく、希釈や使い回しはあまりお勧め出来ないと書きましたが、漂白液や定着液では少々事情が異なります。
ミニラボなどのC-41系処理では、漂白も定着も補充サイクルを使います。
しかし、一般ユーザーの自家現像では、かならずしもそれがいい方法とは言い切れません。
漂白液
漂白処理は前にも書いたように、現像によって画像となった銀を元に戻す工程です。これにより、定着処理の際に全ての銀を除去出来るようになります。
カラーネガ現像用の漂白液は、エアレーションと呼ばれる方法で空気を流し込み、再生するというような事をよく見聞きすると思いますが、ここでも、C-41処理はミニラボなどの現像機を想定して工程が指示されている事を思い返してください。
一般ユーザーの自家現像では小型丸タンクやロータリータンクなどを使いますので、処理中の攪拌によって空気と激しく混ざり合います。したがって、特にエアレーションによる再生というのは必要ないと考えてもいいはずです。
実際、コダックの公式な資料にもそうした事が書かれています。
必要ないと言うと言い過ぎかも知れませんが、あまり考慮しなくても良いという感じでしょうか。
発色現像は最初の工程なので乾いた状態のフィルムが投入されますが、漂白処理は2番目の工程ですので、フィルムと一緒に前の処理で使われている液体が持ち込まれます。
前の処理から持ち出され、次の処理に液が持ち込まれる事をキャリーオーバーと言いますが、発色現像では何も持ち込まれずに現像液が持ち出され、漂白処理には現像液が持ち込まれるわけです。キャリーオーバーには、フィルムに染み込んでいる液体だけでなく、フィルムの表面に付いている水滴や、さらには現像リールに付いている水滴など、意外なほどの量があります。
現像液のキャリーオーバーは漂白にとっては異物ですから、単純に漂白液の能力を低下させてしまいます。
ナニワカラーキットNのように現像液と漂白現像液のセット販売の場合はどのみちセットで使い切りますから構わないでしょうが、別々に用意出来るミニラボ用薬品や自家調合の場合には、薬品のロスを減らす為にもキャリーオーバー対策を少し考えてみるのは悪くありません。
そこで、発色現像の後には軽い水洗を挟みます。これでも水が漂白に持ち込まれる事には変わりませんが、現像液を持ち込むよりはずっとマシです。
そして、今度は漂白液がキャリーオーバーによって持ち出されていきます。
同じフィルムや現像リールが持ち込んだり持ち出したりするのですから、最初の工程である現像液と違って漂白液の量はそれほど変化しませんが、水なり現像液なりが持ち込まれて漂白液が持ち出されるのですから、それだけ処理能力は低下します。
そこで、漂白液のタンク(保存ビン)の総量のいくらかを捨て、新しい液で埋め合わせるようにします。
C-41RA処理での漂白液の補充量(リプリニッシュレート)は非常に低く、35ミリフィルム24枚撮り1本あたり、わずか5mlという少量が指定されています。
しかしこれは、現像工程からのキャリーオーバーを出来るだけ少なくする工夫(フィルム表面の液を搾り取るなど)がされているという条件付きなので、一般ユーザーの自家現像では実現不可能と考えて良いでしょう。
残念ながら公式な資料には普通の小型丸タンク現像での補充率というはありませんので、ある程度は経験で掴むか、補充しながら一定量を処理した後に漂白力のテストをして確かめるなどする事になります。
また、なにも面倒な補充サイクルを使わなくても、「使い回し」法で一定量を処理し、漂白力をテストする、つまり使い回しでの処理可能本数を確かめても良いわけです。
漂白液のテスト
適当なモノクロネガフィルムを光に感光させて普通に現像、定着処理したものを用意しておきます。真っ黒な無地のモノクロネガ、という事ですね。
この真っ黒なモノクロネガを室温で、漂白液に浸けます。
するとやがて黒い画像が薄れてきます。これが漂白処理なのです。
そして、液に浸けてからフィルムが半透明に抜けるまでの所要時間を計ります。
その後、そのフィルム片を水洗してから定着し、綺麗に抜ければ漂白液はまだまだ元気です。そして、漂白液で黒い画像が消えるのにかかった時間だけ漂白処理すれば間に合うという事になりますが、余裕を見て、この時間の倍の時間を漂白処理に当てるのが適当だと考えてください。
黒い画像が消えるまでに1分かかったなら、必要な漂白処理の時間は2分という事になります。
この方法で行くと、仮にテストで3分かかったら6分など、どんどん時間を延長していけばかなりの処理本数をこなせると思いますが、普通の感覚だと(モノクロの定着液も同様の方法なのですが)、新鮮な処理液でテストした際の時間の倍かかるようになったら交換、というのが目安ではないかと思います。
ちなみに、現在のカラーネガ現像に使われている漂白液は環境問題などに配慮してちょっと凝った薬品を使っていますが、非常に単純な処方でも漂白処理をすることが出来ます。
赤血塩80g、臭化カリウム20gを1リットルの水に溶きます。それで出来上がり。
この2種類の薬品はヨドバシカメラやビックカメラの店頭でごく普通に売っているものです。ミニラボ用の現像液だけを購入し、漂白はなにかで間に合わせられないだろうか、という場合には便利でしょう。
定着液
カラーネガ現像での定着処理は、モノクロネガの定着処理と基本的には変わりません。
大きく違うのは、モノクロネガの場合は画像である部分の銀は残るのにたいして、カラーネガの場合は漂白処理を経る事で全ての銀を除去するという点です。
また、要注意点として、カラー画像の色素は強い酸性で壊れてしまうという事があります。
そのため、カラーネガに使う定着液は専用のものか、モノクロ用を流用するならアルカリ定着液か中性定着液、または弱酸性の定着液に限られます。
日本国内では富士の製品が広く出回っているので、モノクロにフジフィックスを使う人が多いようですが、これは硬膜化酸性定着液で、カラーネガには使えません。また、ボク個人的にはモノクロにもお勧め出来ません。
モノクロ用として日本国内で普通に入手出来る製品では、イルフォードのハイパムフィクサーがカラーネガに使用可能です。
ある程度の量を消費するなら、これもミニラボ用の製品を購入する手があります。
実は、業務用のカラーネガ定着液は非常に安価ですので、かなり気軽に買う事が出来ると思います。
また、安価なため、これをモノクロにも使うという人が少なからず居るほどです。ただし、専門家筋からはモノクロでの使用は弊害があるため止めるようにという指摘を時々見かけますので、ボクはやりませんし勧める事もしません。
カラーでは定着後のフィルムに銀は残りませんが、モノクロでは銀が画像になりますので、その銀の安定性に悪影響があったら恐いですからね。
C-41系処理では、定着液も補充サイクルになっています。
しかし、定着液の場合は疲労もさることながら老廃物の蓄積、そしてそれはフィルムから除去した銀なのですが、それが溜まる一方になってしまうため本来は補充サイクルに不向きなものです。
ラボのシステムなどでは定着液中の銀を回収する仕組みがありますので補充サイクルも可能ですが、一般ユーザーの自家処理では考えない方がいいと思いますし、定着液はそれほど高価ではないのでヤヤコシイ事をするまでもないでしょう。
定着液に限っては、「使い回し」法がベストだとボクは思います。
なんてわざわざ書くと特別な感じがしますが、もちろんモノクロで普通にやっているのがこの「使い回し」法、ですよね。定着液ワンショットなんて人はいないでしょ。
もしいたら、勿体ないし環境に無駄な負荷を強いているだけですのでやめましょうよ。
なお、補充でない場合の処理可能本数はコダックなどの資料だとあまり多くはないですが、これはかなり余裕を見ていると読みとれるので、モノクロネガ現像の定着液と同じように、テストするなどで処理可能本数を確かめるという方法が良いと思います。
定着液のテスト
現像していないモノクロネガの切れ端、つまり生のモノクロフィルムを用意して、それを半分だけ定着液に浸けます。室温で結構です。
やがて、段々と透き通ってきます。
浸けた部分が綺麗な半透明になったら、残りの部分も定着液に浸けます。
そこで時間を計り始め、先に浸けた部分と後から浸けた部分の見分けが付かなくなるまでの時間を調べます。
その所要時間の約3倍が、実際の定着時間の目安です。
これも、新鮮な液での時間の2倍かかるようになったら、新しい液と入れ替えた方がいいでしょう。
漂白液も定着液も、使い回しにする場合は段々と処理時間が長くなっていく理屈ですが、どちらも現像と違ってやりすぎという事が起きにくい処理ですので、なんでしたら最初から処理時間を長目にしておいて、処理可能本数いっぱいまで同じ時間で通しちゃっても構わないわけです。
その方が、アタマ使わなくて済みますしね。
なお、漂白も定着も、現像のように温度に厳格になる必要はありません。
常識の範囲って事で、24〜30度くらいの間の、自分でやりやすい温度をひとつ決めておけばいいでしょう。
もちろん、処理時間のテストをするなら同じ温度を守りたいです。
漂白定着液
ブリックスというヤツですね。ナニワカラーキットNなどホビー用処理液で見られる形ですが、これはあくまでも簡易法であり、望ましい形ではないというところがポイントです。
簡易にするためにはロスも出ます。漂白と定着をわけるよりもコスト高になる傾向があるわけです。
カラー印画紙現像のRA4処理では、一般的には漂白と定着をわけず、ブリックスを使いますが、フィルムに比べて印画紙は漂白や定着の処理が弱めの薬品で迅速に行えるため、漂白と定着を一緒にしてもそれほど負担がかからないのです。
それに、印画紙現像は場所も喰いますので、工程を増やすのは望ましくありません。
一方、フィルム現像は場所をあまり取りませんのでメリットは少な目でコストが多い。
フィルム用のブリックスはそもそも無理がある、と言えなくもありません。
また実際、フィルム現像においてはブリックスでは完全に銀画像を除去しきれないケースが多く、そのため、彩度が低く(発色が渋く)なる傾向があるようで、またフィルムによって結果にバラツキも出るそうです。
安定剤
C-41系の処理工程を見ると、最後に必ず安定剤(スタビライザー)というものが使われています。
また、ミニラボ用薬品を売っているところでも、安定剤が並んでいます。
これはもともと、失われやすい色素を保護するためとか、ネガフィルムにカビが生えないようになど、長期保存性を高めるために使われていた物です。
モノクロフィルムでいうならば、富士のAgガードのような感じでしょうか。
もちろん、モノクロでは銀を保護するための保護剤ですが、カラーの場合は色素などを守るのが目的ですので、中身は違います。
昔の安定剤にはホルマリンが使われており、今でも自家調合ネタでホルマリン云々という記述を見かけますが、現在のフィルムはそうした意味合いでの保護剤は必要なく、またホルマリンの有効性を疑う声や、環境や人体への負荷を考えてホルマリンは使わないようにしようと言う動きもあります。
また、現在のC-41系処理(C-41B、C-41RAなど)で使用されている安定剤はホルマリンを使っていませんし、そもそも迅速化のために水洗を省いた工程を実現するために用意された薬品であって、旧来の安定剤とは異なります。
自家現像において、定着後に水洗するならば安定剤はやはり不要です。
そしてもちろん、安定剤より水道水の方がどう考えても安いですから、水洗をせずに安定剤を使う理由も見つかりませんしね。
次のページは・・・まだ書いてません(汗)
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