Film Developer Basic
フィルム現像処方の基礎
フィルム現像液の基本的な話は
別のページにも書きましたが、ここでは処方的な事を軽くおさらいしたいと思います。
フィルム現像液を構成する薬品は、大きく分けて4つあります。
ひとつは現像主薬で、これが感光したハロゲン化銀を銀粒子に還元します。
次が保恒剤、現像液が酸化するのを防ぎ、現像力を維持するために加えられます。
次にアルカリ剤で、現像が進行するにはアルカリ性である事が必要なために加えられます。
最後が現像抑制剤で、現像を穏やかにしてコントラストを抑えたり、未露光のハロゲン化銀が現像されるのを防ぎます。つまりカブリ防止剤というわけです。
それぞれの代表的な薬品は「
使われる薬品について」のページでご紹介しています。
現像力
現像力は現像主薬の種類、量などで変わります。多いほど現像力は強くなり、少ないと弱くなります。
現像力はアルカリ性に傾くほど強く、酸性によるほど弱くなります。
コントラスト
コントラストを決めるのは基本的に現像量ですが、現像主薬の種類にも性格があります。
フェニドン単用の現像液では疲労したフェニドンが次の現像を妨げるためにコントラストが上がらず超軟調になります。
メトール単用の現像液でも同様の理由でコントラストが上がりませんがフェニドンほどではなく、通常の現像には困りません。ただし高コントラストとまでは到底行きません。
ハイドロキノン単用のフィルム現像液というのは一般的ではありませんが、メトールと組み合わせるとメトールの再生を行うため高い現像力を発揮します。これをMQ処方、フェニドンとハイドロキノンを組み合わせた物をPQ処方と言います。PQ処方の方がMQ処方より一般的に強力です。
これはハイドロキノンによる再生がフェニドンにおいてより急速に行われるからです。
したがって、高いコントラスト、高いネガ濃度を得るには単用処方よりもMQまたはPQ処方が適しています。
フィルム感度
フィルムのパッケージ書かれているISO感度などという物は参考程度なのはご存じの通りですが、現像液の処方によって得られる感度に違いがあります。
そもそも現像力の低いフェニドン単用ではISO感度より2段以上低い感度しか得られません。
メトール単用の現像液でISO感度より1段低い程度というのが相場です。
MQ現像液ではメトール単用よりごくわずかに感度が得られるかも知れませんが、適切なコントラストの範囲でと考えるとあまり期待は出来ません。
高い感度を得るには、少ない露光量のハロゲン化銀でも還元しやすいフェニドンにハイドロキノンを組み合わせたPQ処方が向いています。
これはフェニドンの方がメトールより吸着力が高いためです。
また、高い感度を得るためには意外かもしれませんが現像液の希釈率を上げるのが効果的です。
これはコントラストを上げないようにする事で、ハイライト濃度を低く抑えたままシャドウ部分の現像を出来るだけ行うというコンセプトによります。そのために、局所的かつ一時的に疲弊しやすい現像処方(あるいは希釈率)を用い、攪拌を控えた長時間現像を行います。
現像液の現像力が高いイコール高いフィルム感度が得られる、ではありません。
粒状性
フィルム現像をやり始めて最初に気にするのは粒状性に関してではないかと思いますが、微粒子の基本になるのは元々のフィルムの粒状性です。
微粒子現像液で現像したISO400クラスのネガは、どうあがいても標準現像液で現像したISO100クラスのネガに敵いません。
現像液は魔法の液体ではありませんから、微粒子をあくまでも求めるなら少しでも粒状性の高いフィルムを使うのが本筋です。
一般に低い感度のフィルムほど粒子が細かく、トラディショナルタイプよりTグレインフィルムの方が微粒子です。
作られた段階での粒子より細かい粒子にすることは出来ませんから、いかに粒子を荒らさないか、というのが微粒子現像のポイントです。
しかし、それは現像量にかなりの部分がかかってきます。
現像過多にしない、というのは処方云々というのとは少し違う話なんですね。
処方が大いに関わるのは、粒子を目立たなくするという部分です。
微粒子現像液の処方を見ると、無水亜硫酸ナトリウムが多量に含まれています。
これはもともと現像液の酸化を防いで現像力を維持するための物なのですが、同時に銀粒子を溶解する作用があるため、微粒子現像の目的で保恒剤としての機能以上に多く加えられています。
溶かしたからと言って、元々の粒子より細かくなるわけではありませんが、角が落ちて目立たなくなるために粒子が見えにくくなる、つまり見た目として微粒子になるわけです。
微粒子化のためには無水亜硫酸ナトリウムを多め、と言うのが基本。
シャープネス
粒子を溶解して見た目を微粒子化すると、デメリットとして見た目のシャープさが失われます。
見た目のシャープさは微粒子とは関係有りません。
どちらかというと逆で、微粒子なほど見た目は甘い描写になります。
>>
サンプル 〜 粒状性によるシャープさの違い
シャープさを優先するには無水亜硫酸ナトリウムなどの溶解成分を減らすことになります。
また、現像主薬を減らしてもシャープさを得られます。
これは現像中、特に攪拌と攪拌の間に一時的に現像主薬が疲弊して現像が停滞するからです。
現像力が局所的に失われるとエッジ効果と呼ばれる現象で明暗の輪郭が目立つようになります。
よく行われる希釈現像というものの一端がここにあります。
しがって、再生力のある、つまり疲弊しにくいMQ処方、PQ処方よりもメトール単用処方の方がシャープさを得やすくなります。
カブリの防止
フィルムを現像すると、本来は現像されないはずの未露光のハロゲン化銀、あるいは極微少な感光量のハロゲン化銀もある程度は現像されてしまいます。
これをカブリと言います。
カブリを抑えるために加えられるのが臭化カリウムなどの現像抑制剤です。
現像力の低いメトール単用処方ではカブリの発生が少ないため、多くの場合現像抑制剤は使われていません。
ハイドロキノンを使った処方ではややカブリが多くなりますのでほとんどの処方で加えられています。
現像方法による違いもあり、現像時間が長くなる程カブリが増えますので、必要に応じて量を調整します。
pH緩衝
現像液の現像力は溶液のpHによって大きく変わります。
そのため、pHを求められるレベルに維持することは大切です。
現像液にはアルカリ剤が含まれていて、それらの多くはある程度安定したpHを示す物が選ばれています。
しかし、原液からの希釈率を変えて使うことも多いため、薄めてもpHが変化しにくいための工夫として、pH緩衝という方法がとられます。
pH緩衝は、安定したアルカリ性を示す薬品と安定した酸性を示す薬品とを組み合わせ、両者のバランスを取ることで行われます。
こうした緩衝済みの溶液は緩衝無しの溶液より、高い濃度でpHが安定しているため、薄めてもpHが変化しにくいのです。
pH緩衝に使われるアルカリ剤は主にホウ砂で、組み合わされる酸性剤はホウ酸となります。
両者の多い少ないで意図したpHに溶液を設定します。
この両方が含まれている処方は希釈してもpHが変化しにくいと言えます。
逆に、pH緩衝されていない処方をむやみに希釈するのはあまり良い考えとは言えませんよね。
希釈に使う水のpHなんて誰も意識してないでしょ?
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