銀塩ウェットプロセス★モノクロ写真フォーラム
近年、デジタルカメラの急速な進歩と低価格化により、商業写真分野のみならずアマチュア写真愛好家の間でもデジタルカメラによる撮影・編集・プリントがごく一般的になり、写真文化の主流であった従来のフィルムを使用する写真術に取って代わろうとしています。
我々アマチュア写真愛好家にとって、こうした流れはDPEをラボに依頼することなく自宅で楽しむことを比較的容易にし、生活の中での写真というものへの接し方を変えていく可能性を持つ歓迎すべきものだと考えられます。
小型のデジタルカメラのみならず携帯電話に内蔵されたカメラの高性能化、デジタルカメラに直結してただちにプリント出来る小型プリンターの登場、携帯電話間の画像転送機能などが、従来の撮影・DPE・用途や共有手段といったものに新たな可能性を与え、写真文化を取り巻く環境はこの長い写真史上に例を見ない速さで変化し始めました。
一方で、フィルム式カメラの販売台数は急激に減少、すでに出荷台数でデジタルカメラを下回り、今後その格差は大きく広がっていくと思われます。
言うまでもなく銀塩フィルムの消費量も同様で、フィルム業界を長年リードしてきたイーストマンコダック社においても、フィルム式カメラを含めた銀塩フィルム事業に今後大規模な投資を行わず、デジタルに注力した展開をする事を明言しております。
日本国内にあっては、業界最大手の富士写真フイルムがフィルム事業の継続を打ち出しているものの、写真産業の主力がデジタルであることを明確にした業務計画を発表。
デジタル化が写真文化の変革と発展に大きく寄与する一方で、銀塩フィルムが写真文化の基幹であった時代は終焉を迎えました。
そうした流れの中で、あらためて銀塩モノクロ写真が見直されています。
デジタルに圧倒され凋落の一途をたどる銀塩カラー写真と比較して、もともとの市場が極めて小さいとはいえ、モノクロフィルムの出荷量は横ばいかやや上向きであるとするレポートもあるようです。
かつて写真文化の中核であったモノクロ写真は、カラー写真にその座を奪われた後もある一定の地位を守ってきました。
今日の、デジタルが銀塩カラー写真を駆逐する動きの中でも同様です。
記録・伝達メディアとしての機能でデジタル・フィルムのいかんを問わずカラー写真と比較して圧倒的に劣るモノクロ写真は、カラー写真が十分に普及した段階ですでに実用目的での優位性を失っていました。
その事によって逆に、今日のモノクロ写真は写真というメディア全体が技術の急激な進歩に揺さぶられるなか、すでに確立しつつあった独自の文化としてさらにその存在を際立たせるようになったのだと考えます。
デジタルカメラの普及で写真文化そのものの裾野は大きく広がりつつあります。
そこから単なる記録手段ではない、創造・創作のための一つの表現手段としてモノクロ写真に触れる新たな愛好家層が増えつつあるのは非常に喜ばしいことです。
しかしそうした流れの中で、モノクロ写真入門者層の要望に応える情報や技術知識の供給源が不足していることも事実だと思います。
モノクロ写真の特徴として、比較的手軽に自家処理(フィルム現像・引き伸ばしプリントなど)を行うことが出来、また同時に自家処理の方が一般的な商業ラボに依頼しての処理よりも良い結果を得られるという点があります。
更に言えば、モノクロの写真術の中には自家処理・暗室作業というものが欠かせない要素として存在するのです。
確かに、入門書の類も幾種かは刊行されていますし、インターネット上でもたくさんの初心者向け紹介サイトが公開されています。
しかし残念なことにそれらを見渡して感じるのは、いかに情報の活性化が行われない時期が長く続いていたかという事です。
モノクロ写真術を、今日のデジタル写真術と比較する意味でか、古くからある伝統的なものと捉えがちです。
なるほど、そういった見方は十分に出来ますし魅力的でもあります。
しかし、これからモノクロ写真をやってみようと言う世代が、まさに生まれたその頃から、なんの進歩もしていない入門書・解説書の類、それら旧態依然の書籍からの受け売りに過ぎないホームページの記事が大勢を占める状況で、果たしてこの先モノクロ写真という文化は大きく発展していけるのでしょうか。
古くからある書籍や、有象無象のホームページ記事の内容は決して全てが間違っているわけではありません。
銀塩フィルムを介した写真術が仕組みとして根本的に変わるわけではないからです。
間違ってはいないが古い、あるいは、間違ってはいないが浅い、と言うのが妥当な表現かも知れません。
何故そうなのか。それは、古い知識を更新したり誤った情報を訂正したりする場、情報を共有し蓄積する場がなく、その代わりに古い知識を伝え続けてしまうという構造、疑うことなくそれらを受け入れてしまう土壌があるからなのです。
インターネットという情報共有媒体がこれだけ普及している現在、モノクロ写真という文化をただ継承するのではなく、より発展させ、今後のモノクロ写真文化を創造するために、正しい知識や新しい情報を広く共有出来るようになることを、モノクロ写真の楽しさを知る愛好家のひとりとして希望します。
2004.04 苅尾邦彦
tokyo-photo.net / forum