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赤外フィルム
最初に、肝心のフィルムがどんどん無くなっているような事を書きましたが、まず、たしかに日本製で広く使われていたコニカ赤外750はなくなり、コダックHIEも終了。
しかし、MACOのIR820cも廃盤となりましたが、このフィルムはもともとクロアチアのFOTOKEMIKAというメーカーが作ってMACOが販売していた物で、メーカーは2007年に生産を再開しました。すったもんだあったらしく販売ルートがMACOではなくEfkeのブランドになりましたが、これも海外通販で入手可能です。
また、FOTOKEMIKAからの供給を受けなくなったMACOも、旧Agfa勢とのタイアップで新たに赤外フィルムをリリースしています。
さらに、純然たる赤外フィルムではありませんが、一般的なパンクロマチックフィルムよりずっと近赤外領域に感度があるイルフォードSFXフィルムも、2007年春に復活となりました。
残念ながら2007年12月現在では日本の代理店(中外写真)が扱っていないので正式ルートでは日本には入ってませんが、海外通販で容易に購入可能です。
赤外フィルム写真もまだまだ、というのは、こういうわけです。
コダックHIE(残念ながら販売終了)
一般に入手可能だった写真用フィルムの中では、もっとも長い波長まで感光し、また感度があるフィルムです。
感度があるために粒子が粗く、アンチハレーション層を持っていないために取り扱いが厄介です。
ただし、アンチハレーション層が無いがためにハイライトが派手に滲む効果が好まれる事もたしかで、いかにも赤外写真っぽい雰囲気を一番持っています。値段はかなり高いです。
扱いが厄介というのは、まず、カメラへの装填や取り出しは全暗黒に近い状態で行わないと被ってしまう事。
それと、比較的新しい自動巻き上げの135フィルム(35ミリフィルム)カメラで多く使われている、赤外線を使ってフィルム送りを制御する仕組みでも被ってしまう事。
もうひとつコダックHIEの使い勝手では、アンチハレーション層が無いためにフィルムに当たった光(赤外線)がフィルムを通り抜け、カメラのフィルム圧板(後ろからフィルムを支える板で裏蓋に付いている)に反射して戻ってくる事。
そのため、日付写し込み機構などのための穴が圧板に開いているカメラだと、その部分が写り込んでしまいますし、圧板の表面に突起が並んでいるようなカメラ(普及機に多い)でもそれが写ってしまったりします。
かなり使うカメラを選ぶフィルムと言えますね。
とはいえ、長く赤外フィルムの代表格であるために、さまざまなサンプル画像や情報が出回っているのも確かです。
復活を切に望みます。

Efke IR820
Efke IR820
かつてMACO IR820cとして知られていたフィルムのようです。
そもそもはFOTOKEMIKAが作ってMACOが販売していたのですが、2007年の再生産ではEfkeブランドで発売となりました。
135や120は1本10ドルほどで売られていますし、他にシートフィルムのラインナップもあります。
イルフォードSFXと同様、パンクロマチックフィルムの分光感度を赤外域まで伸ばしていったかたちで、名前のように820nm程度まで感度があります。
フィルター無しで一般的なモノクロフィルムのような画像を得られますが、その際の感度はISO100程度。赤外撮影では当然かなり低くなります。
135フィルム(35ミリフィルム)では、ケースからの取り出し・カメラへの装填、カメラからの取り出しは全黒で行うように指示されています。シートフィルムはもちろんです。
120フィルム(ブローニーフィルム)は薄暗いところで、との指示です。
ILFORD SFX
何年か前にイルフォードが傾きかけた時にいったん廃盤となったのですが、愛用者の要望に応える形で再度ラインナップされました。
残念ながら日本におけるイルフォード代理店である中外写真さんが取り扱っていない(2007年5月現在)ので、購入は海外通販に頼る事になります。
135と120の両方があり、価格は1本8ドル程度とかなり手頃です。
赤外フィルムの仲間として捉えられますが、実際にはコダックHIEのようなバリバリの赤外フィルムではありません。
通常のパンクロマチックフィルムから赤外域に向けての感度を伸ばしていった形で、720nmにピークがあり、740nmくらいまで感度があります。
フィルター無しでは一般的なモノクロフィルムとかわらない画像を得られます。
その場合はISO200相当で比較的感度は高いほうだと言えますが、赤外撮影では使える範囲が狭いために撮影感度(のようなもの)は低めです。
極端な赤外フィルムでは無いので、取り扱いは比較的容易で、一般のモノクロフィルムと変わりません。
せいぜい、薄暗いところでのカメラへの装填や取り出しが推奨されているくらいです。全暗黒は必要有りません。また、フィルム送りを赤外センサーで行うカメラでも使用出来ます。
フィルター無しからイエロー、オレンジ、レッドといった一般的なモノクロ用フィルターでの撮影から、SC-72くらいのフィルターでの赤外っぽい撮影まで、幅広く1本でこなせるのが魅力ですね。
レッドのフィルターだと、一般のモノクロフィルムはかなりキツイ雰囲気になりがちですが、SFXは自然さをあまり失わないように思います。
赤外フィルムのあれこれ
赤外フィルムは基本的には一般的なモノクロフィルムの延長にあるわけですが、それでもやや特殊なジャンルには違い有りません。
そのせいか、どうも迷信めいた事がまことしやかに囁かれたりしているようです。
そこで、ちょっと気になる部分を書き出してみます。
● 赤外フィルムをケースから取りだしてカメラに装填したり、カメラから取り出したりというのは、全暗黒で行わなくてはならない。
というのが良く言われていますが、これはコダックHIEを指しているのだと思います。
コダックHIEは感度が高く分光感度も赤外域に長く伸びている上に、アンチハレーション層が無いため被り易いのです。
特に135フィルムでは、パトローネのフェルト部分が赤外線を通してしまうため、そこから感光してしまいます。アンチハレーション層が無いコダックHIEは一気に広い範囲で被ってしまうのだそうです。
Efke IR820でも、135フィルムは全黒での取り扱いをメーカーは指示しています。端の数コマが被ってしまうようです。
とはいえボクの経験では、薄暗いくらいのところでパッパと手際よくやっている分には全く影響ありません。
イルフォードSFXは純然たる赤外フィルムではありませんし、それほどの感度があるわけではないので、極端に神経質になる事はありません。
ケースやカメラへの出し入れでは、直射日光を避けるくらいの気配りは最低限必要ですが、普通のフィルムでも当たり前の事ですからね。
カメラへの出し入れに関して言えば、135フィルム(35ミリフィルム)よりも120フィルム(ブローニー)の方が被りにくいのですが、カメラへの装填や取りだしを薄暗いところで行う事を考えると、必ずしも120フィルムの方が扱いやすいとは言いにくいでしょうね。
● カメラは金属製でなくてはならない。
なんてな事をまことしやかに言う人も居たようですが、どうにも根拠がありません。
プラスチックボディのカメラでも問題ありません。
一般的にカメラのシャーシや外装に使われているプラスチック素材やABS樹脂素材が、可視光は遮断するけれどそれとさして波長の変わらない近赤外線を透過するわけがありません。
もしカメラの材質が原因で、フィルムが赤外線で被るなら、可視光でも被るはずです。
それはカメラが壊れているか不良品か、あるいはどこかしらの遮光素材の質が悪いオモチャのような物だからであって、ようするに光線漏れでしょう。
● コニカ赤外750では、モノクロ用のオレンジやレッドのフィルターで十分な赤外写真効果が得られたのに、MACOやイルフォードはダメだ。
何て事を言う人が結構いますが、コニカ赤外750の分光感度曲線を見れば一目瞭然で、たしかにイルフォードSFXよりもずっと赤外域の感度がありますが、それ以前に、このフィルムは500nmを過ぎたあたりでいったん感度が無くなり、その後660nmくらいから赤外域に向けて感度がある設計でした。
MACO(Efke)IR820やイルフォードSFXフィルムでは、パンクロマチックの全域に感度があるため、可視光をカットするためにかなり番手の高いフィルターが必要です。
しかしコニカ赤外750では可視光部分の上半分にはそもそも感度がないため、一般にYA3と呼ばれるオレンジのフィルター(560nmでのシャープカット)で十分だったのです。レッドのフィルターを使っても結果は同じです。
むろん、どのフィルムも赤外域にも感度があるわけですから、実際にはオレンジのフィルターであってもフィルター無しであっても、赤外部分も撮影しています。
しかし可視光部分の方がずっと露光量が多いため、赤外写真の要素が相対的に少なくなってしまうのです。
コダックHIEだとレッドフィルターでもかなりの赤外効果が得られるのは、赤外域に広く感度があるための可視光部分とのバランスと、アンチハレーション層がないためのハレーションによってさらに「赤外っぽく」見えるからです。
赤外フィルムと、それで赤外効果を得るためのフィルターの組み合わせは、フィルムの分光感度曲線を見れば簡単にわかります。
● 赤外フィルムは使用期限が短い。
というのは、赤外域にまで感度を伸ばした部分の保存性があまり高くないためだそうです。
長く置いておいた赤外フィルムは、赤外域部分の感度を徐々に失っていくようですね。
赤外フィルムを買ったらできるだけ早めに使用し、保存する場合は冷蔵や冷凍を心がけましょう。
ボクの経験では、2年ほど冷蔵庫に入れていたコニカ赤外750で、それほど大きな支障はありませんでしたが、わざわざリスクを負う事もありません。
イルフォードSFXなどは、とりたてて神経質になる事はないと思います。
常識的なフィルムの保存をしている方なら問題ないでしょう。
● オートフォーカスカメラだと被る。
なんてな事はありませんよね。
一眼レフカメラや一部のレンジファインダーのAFカメラのオートフォーカスはコントラスト検出式ですので、赤外線とは関係有りません。
また、コンパクトカメラに多いアクティブ式AFは、赤外線を出してその反射を受けることで距離を測りますが、測距している時は撮影していないですし、撮影している時は測距してないのですから被ったりしません。
もっとも、撮影時にも赤外線を出し続けているカメラがあったとしたらゴメンナサイですが、それでも問題なるような発光量とも思えませんね。だいたいからして、被写体に向けて発光しても、カメラ内部に向けて赤外線を出したりはしないわけですから。
● 自動巻き上げのカメラだと被る。
フィルムの巻き上げには、かつてはパーフォレーション(スプロケットホール)をツメで引っかけてその数を数える方法が採られていましたが、現在では赤外線を使ったセンサーでパーフォレーションを数えながら精密にフィルム送りを制御する仕組みが一般的になりました。
それによってフィルムの装填が非常に簡単になったり、コマ送りが正確になったり、途中で巻き戻したフィルムをまた正確に同じコマまで送ったりする事が出来るようになりましたが、センサーが発する赤外線で赤外フィルムが感光してしまうわけです。
ただし、これが大きな問題になるのは感度が高く長い波長まで感光するコダックHIEだけではないかと思われます。
イルフォードSFXやコニカ赤外750では発生しない問題ですし、Efke IR820もボクのキヤノンEOS Kiss Liteではまったく影響有りませんでした。。
また、コダックHIEでも、フレーム全部が感光するような事はなく、パーフォレーション部分から若干フレーム内にかかる程度で、全てのコマが全く使えないと言う事は無いようです。
しかし、被る事は被る。
現実問題として、カメラによって使っている赤外線の波長や強さが異なるでしょうから、影響を与えるカメラ、影響を受けるフィルムも同じではないはずです。
具体的には、カメラのメーカーに問い合わせてみてもいいでしょうが、赤外フィルムは使えるか、とだけ問い合わせても無駄だろうと思います。
実際、キヤノンは赤外センサーを使っているEOSでは赤外フィルムは使えないと言っています。
しかしEfke IR820とEOS Kissとの組み合わせでは問題がないのです。結局のところ、試してみるしかないでしょうね。
それと、被りが発生する事と、それが理由で使用できないこととは必ずしも同じではありません。
パーフォレーション部分が若干被ったとしても、肝心の画像部分に影響がなければ、それは問題にならないのです。
ボク個人の考えでは、全黒やそれに近い暗さのなかで手探りでフィルムを装填する事を考えると、出来るなら自動装填のカメラを使った方が楽だろうと思います。コダックHIEはともかくとして、ですが。
● 赤外フィルムの海外通販は出来ない。
なんてな事は特別ありません。
赤外フィルムは被りやすいというイメージがありますが、一般のフィルムに比べて被りやすいのは赤外線に対してであって、それは普通にケースに入っていれば守られているわけですから、普通のモノクロフィルムとさして変わりません。
赤外線を強く浴びるとしたらギラギラの直射日光、と言う事になるでしょうが、それは通販などとは関係ありません。
そして、一般に赤外フィルムは感度が低めですから、空港などの貨物検査で使われるX線の影響は、超高感度フィルムよりもかえって少ないわけです。旅行にも持っていけます。
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