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赤外写真の露出の決め方
いちばん悩ましいのがこのあたりではないかと想像します。
それぞれのフィルムの説明書きにもありますが、撮影するのは主に赤外線であって、可視光ではありません。
しかし、カメラの露出計や、単体の露出計などは、そもそもが可視光を撮影する目的で作られているので、可視光を測りはしても、赤外線は測ってくれません。
そもそも、あまり気にしてる人は少ないのではないかと想像するのですが、露出計の分光感度は緑の波長を頂点とした三角形のような感じで、青や赤もそれほど測ってはいないのです。
可視光においてさえ、露出計の分光感度と一般的なフィルムの分光感度がうまく合ってはいないんですね。
さらにフィルターを使った撮影だと、測光値とフィルムの感度とで、整合性が取れる事はなかなか無いんです。
ですので、イエローやレッドのフィルターを使う時でさえ、露出係数がいくつ、なんて事を言うのはあくまでも目安でしかなく、フィルター撮影では念のために段階露光をする事が重要です。
まして可視光ですらない赤外写真です。
露出計はそれほどアテになりません。
もうひとつ考慮しておきたい事は、赤外写真であろうが通常の可視光写真であろうが、写真はほとんど反射光を撮影していると言う事。
そして赤外写真においては、木々の葉が極端にオーバーに露光されるスノー効果に見られるように、同じ被写体を撮影する場合でも、可視光とはまた異なる反射率を相手にしている事です。
いわゆるスノー効果は、植物の葉が赤外線を非常に良く反射するために見られる現象です。
水面や青空が黒くなることなども、赤外線の反射が可視光とは異なるために起こるものです。
可視光を測光する露出計では、これらを把握する事は出来ません。
とはいえ、なにかしらの目安がなくてはなりませんよね。
露出キメ打ち
いちばん分かりやすく開き直った感じなのは、春から夏の季節で日中屋外だったら絞りいくつでシャッター速度いくつ、というもの。
その季節には、それくらいの近赤外線が出回ってるという目安です。
いわゆるサニーシックスティーンの赤外版みたいなものですね。
所詮は目安ですから、段階露光をしておくべきですし、日中屋外以外ではどうなんだ、という話にもなります。
また、地球上のどのあたりでのデータなのかというのも考慮されるべきです。
ただし、フィルムのメーカーが説明書きに記している目安はたいてい当を得ているので使えます。
ILFORD SFX
720nm程度のベリーディープレッドフィルター(SFXフィルター、SC-72など)使用時のメーカーの推奨は、明るい晴天において絞りf5.6、シャッター速度1/30秒です。
東京あたりでは、これでだいたい十分。そこそこの露出で撮れますね。
可視光基準のフィルター係数
もうひとつは、基本的に可視光も近赤外線もその出所の代表は太陽ですから、可視光を露出計で測って、赤外線も同じような比率だろうと期待する方法。
例えば、72番のフィルターを使っている場合、撮影感度はEI12くらい。というような感じ。
残念ながら、可視光と赤外線の量は比例しないので、これもあくまでも目安でしかありません。
したがって重要なカットでは段階露光をするべきですし、光源が太陽でなかったら、別の目安が必要になります。
とはいえボクの経験では、太陽光が光源である日中屋外ではだいたい、だいたいですが当たります。
日中の屋外での撮影なら、十分に実用的な方法です。
具体的に、このフィルムでこの番手のフィルターの場合、撮影感度がどれくらい、というのはテスト撮影を繰り返して求める必要があります。
まずは段階露光をマメにやって、データを蓄積していく事になりますね。
製品のデータシートにも記載されていますし、インターネットなどで調べれば、最初のとっかかりになる情報は結構得られます。
それらを目安にして、段階露光で撮影し、結果から自分なりの撮影感度を決めるといいでしょう。
ILFORD SFX
フィルター無しではISO200相当になります。
オールラウンドなフィルムとしてイエローやオレンジなどの一般的なモノクロ用コントラストフィルターも使うと思いますが、赤外っぽさを出すためにディープレッドのフィルター(コダック#29、SC-62など)を使った場合、1と2/3段程度のプラス補正が必要になり、EIで言えば64程度と言う事になります(露出計のISO感度を64に設定するという意味)。
さらに劇的な効果を得るために、可視光と赤外域の境目付近である720nmのフィルター(SFXフィルター、SC-72など)を使用すると、4段の露出補正がメーカー推奨です。
EIに換算すると12と言う事になります。
Efke IR820
フィルター無しではISO100相当とされています。
劇的な効果を得るために可視光と赤外域の境目付近である720nmのフィルター(SFXフィルター、SC-72など)を使用すると、4段の露出補正がメーカー推奨です。
EIに換算すると6と言う事になりますが、晴れた日の日中なら10前後でも十分いけるという話をよく見かけます。
しかし、ボクの経験ではもっと感度は低いように思えますねぇ。
ただし、前のページのフィルターの装着についてでも書きましたが、カメラ内蔵の露出計を利用する場合には、フィルターの装着方法から考えておかなくてはなりません。
レンズの前、あるいは直後にフィルターを装着した場合、フィルターが可視光を遮断してしまいますから、TTLによる可視光の測光は出来なくなりますし、カメラ内蔵の露出計はわざわざ赤外域を無視するように出来ているのですから役立たずです。
一眼レフカメラの場合、ミラーの後ろ、フィルムよりにフィルターを装着すれば、フィルム面反射測光によるストロボのダイレクト調光以外は機能します。
レンジファインダーカメラの場合、外部測光なら問題有りませんが、最近の露出計内蔵レンジファインダーカメラはほとんどがTTLでのシャッター幕面反射測光のようですから、これも考慮しなくてはなりません。
赤外撮影ならではの露出補正
TTLか外部のメーターかは問わず、可視光を反射光式で測り、それに対してフィルター係数なりなんなりというアプローチを取る場合、赤外撮影である事を前提にした露出補正という考え方が出来ると思います。
例えば、スノー効果に見られるように赤外域での反射率が高い植物の葉などが画面内の測光範囲にある場合、可視光を基準にした測光結果では植物の葉の部分は露出過多になる傾向が間違いなくあるわけですから、それを見越してマイナス補正するべきでしょう。
逆に、青空が画面内の多くを占める場合には、可視光での測光結果よりも露光が少な目になり、たしかに空が黒っぽく表現されますが、例えば高層ビルなど他の要素がやや露光不足になる傾向が見られます。
そうした傾向は光源(多くの場合太陽)との位置関係や角度によって左右されますが、明らかに可視光よりも赤外域の方が高い反射率でもって自分に向かっていると分かる状況、低い反射率で自分に向かっている状況では、それに応じた露出補正によって、ある程度的確な露光量を得る事が出来るはずですし、経験を重ねれば確度を上げられるアプローチです。
弱いフィルターならTTL測光でも
先に、フィルター使用の場合はTTL測光でも段階露出が重要と書きましたが、分光感度が一般のパンクロマチックフィルムよりも赤外方向に長いフィルムでは、イエローやオレンジといったフィルターの影響が相対的に少なくなるため、TTL測光でも案外それなりの適正露出になったりします。
レッドのフィルターあたりでは、一般のパンクロマチックフィルムよりも少ないフィルター係数で間に合っているようです。
実際、ボクはイルフォードSFXでイエローからレッドをレンズに着けて、TTL測光のAEでバシバシとスナップしますが、概ね適正露出になるばかりか、一般のパンクロマチックフィルムよりやわらかく自然なトーンが得られるのでお気に入りです。
ちなみに、その際の撮影感度(カメラにセットする感度)は160〜200にしています。
改造露出計
最後は、実際に赤外線を測ってしまう方法です。
露出計は可視光を測るように作られていると書きましたが、そもそも測光する根幹は古くはセレン光電池であり、Cdsだったりを経て、現在ではほとんどがシリコンフォトダイオードです。
Cdsの分光感度は可視光の真ん中あたりを頂点とした三角形で、通常の撮影には都合が良かったわけですが、赤外線を測るのには向いていません。
しかし、シリコンフォトダイオードはもともと近赤外線域に感度が高いのです。

そこで、シリコンフォトダイオードを使った露出計では、ダイオードの上に赤外線を遮断するフィルターを被せて、可視光部分だけを測るように作られています。
先ほどまでに出てきた赤外フィルターとは逆に、短い波長を通して長い波長を遮断するフィルターですね。
デジカメの世界ではローパスフィルターという言葉が使われるようですが、これはショートウェーブパスフィルター(SWPフィルター)と呼びます。
しかし、近紫外線域から近赤外線域まで感度のあるシリコンフォトダイオードを写真撮影用の露出計として使うのですから、実際には可視光部分を透過するタイプのバンドパスフィルター(ある帯域だけを透過するフィルター)と考えるのが妥当でしょう。
左の画像は写真用の露出計ではありませんが、廉価な照度計を分解してみたところです。
電線の先にあるのがフォトダイオードで、黄色と水色の四角いのが、ダイオードの上に被さっていたフィルターです。
黄色はロングウェーブパス、水色はショートウェーブパスのそれぞれフィルターですから、両方を組み合わせる事によって短波長と長波長を除去し、可視光部分を残しているわけですね。
この照度計のフィルターが付いている状態での分光感度曲線は、緑を頂点とした三角形をしています。
それはさておき、という事は、そのフィルターを外してしまい、代わりに撮影に使うのと同じ赤外フィルターを装着すれば、可視光を遮断して赤外線だけを測る事が出来るようになります。
それくらいなら、自分でやれない事もありません。
しかしながら、ボクはセコニックの露出計を普段使ってますのでセコニックの場合ですが、ガラス製のこの小さなフィルターはダイオードの上に接着の様な形で取り付けられていて、これを剥がすにはフィルターを破壊しないとなりません。これはちょっと根性が要りますし、ボク自身は失敗経験すらあります。(そこで上の画像のような廉価な照度計が登場したわけですが)。
ミノルタオートーメーターは改造しやすいという話を聞いたのですが、誰かやった事ある人いたら教えてください。
考慮すべき点
シリコンフォトダイオードの上のフィルターを取り外して、赤外フィルターを装着したとしても、かならずしも正確な測光(測赤外線)が出来るわけではありません。
なぜなら、赤外フィルターによって遮断する波長はフィルターの番手によって決まりますので、撮影にも同じフィルターを使えば問題ないのですが、逆に波長の長い方がどこまでなのかという問題がクリアになっていないからです。
分かりやすく言うと、シリコンフォトダイオードの分光感度が、使用するフィルムの分光感度と一致していないと正確な測光(測赤外線)は出来ないという事です。
例えば、720nmのフィルターを、露出計側とレンズ側に装着したとします。
この場合、短波長側は720nmで一致しますが、フィルムの分光感度が820nmまでしかないのに、シリコンフォトダイオードの分光感度が1100nmまであったら(実際、シリコンフォトダイオードの感度はもっと上まである場合があります)、820nmから1100nmまでの赤外線の量によって誤差が生じてしまうのです。
そこで、より正確な改造露出計を作るなら、使用するフィルムの分光感度に合わせて、露出計側の長波長側を制限しなければなりません。
つまり、820nmまでの感度があるフィルムに720nmのフィルターを使って撮影する場合、露出計のシリコンフォトダイオードには、720nmのロングウェーブパスフィルター(シャープカットフィルター)と、820nmのショートウェーブパスフィルターを装着して、720nm〜820nmの波長だけを測るべきなのです。
ただし、ロングウェーブパスフィルター(シャープカットフィルター)は75mm角のシートが1000円くらいで簡単に手に入りますが、ショートウェーブパスフィルターはもっと小さなサイズがウン万円するガラス製の工業用製品です。
これもちょっと根性が要りますが、やってやれない事はないでしょう。実際、こうした赤外写真用に露出計を改造するサービスもあるんですよね。
さて、露出計を改造したとして、それによって得られる測光値で撮影するには、測光値と実際の絞りやシャッター速度の組み合わせ(EV値)とのすりあわせ、キャリブレーションをしなくてはなりません。
露出計が示す値が、フィルム感度でいうといくつを基準にしているのかはまだ不明だからです。
当たり前ですね、本来基準値にキャリブレーションされているものを改造しちゃったんですから。
そこで、測光して得られた値を記録しながら、実際に段階露光で撮影して、その結果から、露出計がこう言っている時はこれで正解だったから、フィルム感度で言えばISOいくつ相当だった。というのを求める事になります。
これは一度求めてしまえば、あとは普通に撮影感度いくつ、という感じで改造露出計を使えますので、最初のテストは大変ですが後は非常に楽になります。
なお、先ほど赤外写真では可視光とは異なる反射率を相手にしていると書きましたが、そのためどうせなら入射光式ではなく反射光式として使った方が確実です。
もっとも、これは普通の撮影の測光でも反射光式を信奉しているボクの言い分ですけど。
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