ゾーンシステムもスポットメーターもグレーカードもフィルム濃度計も使わないキャリブレーション
モノクロ写真を始めてしばらくすると、やれEIだの、やれ減感だのと、妙な事を見聞きし始めます。
理屈が分かるとなんて事はないんですが、リバーサルフィルム、お店で現像するカラーネガフィルム、あるいはデジタル写真、などの感覚がすっかり身にしみてしまうと、フィルムの現像を自分で「調整」し、印画紙の種類や調子を選んでさらに「調整」も出来るモノクロ写真の感覚が、かえって理解しにくくなってしまう事があるようです。
このサイト内には、これに関連した事があちこちに書いてあります。
同じ事を、視点を変えたりアプローチを変えたりして繰り返し解説しているつもりですので、あるいは大部分は重複しているかも知れませんが、このページでは、「撮影感度」と「フィルム現像」の調整を、もっとも実践的かつ簡単に行う方法を書いてみようと思います。
実を言うとtokyo-photo.net内では、こうした感度やコントラストについては実践的な側面よりも理屈や仕組みに重きを置いています。
というのは、測光や現像、プリントと言った過程はひとりひとりで異なるはずですし、そもそも、写真というのは撮影も観賞も非常に主観的なもの。
理屈が分かれば、あとはどう応用するにも簡単ですし、どう応用するかが写真技術だろうと思うのです。
ですので、このページを書くに当たっては少々悩みました。
理屈を出来るだけ抜きにして、実践方法だけを紹介するのにはボク自身抵抗があるんですね。
そのあたりを一応片隅に置いていただいて、簡単かつ実践的な撮影感度とフィルム現像量の調整方法です。
まず最初に、ちょっとだけ理屈っぽい事を書いて、その後実際に何をどうするかを説明します。
露光過多と露光不足
以前、どうもプリントがネムイ感じ、つまり軟調なのが悩みで、フィルム現像をどうしたらよいだろうかと仰るある方の作品を、ネット上でですが拝見した時、問題はフィルム現像ではなく撮影時の露光量だと一目でわかりました。
モノクロ写真を始めたばかりの方の多くは、どうしても自家処理部分の不安が大きいせいか、なにか問題や悩みがあるとそれを自家処理の部分、つまりフィルム現像などに負わせ勝ちのようです。
逆に言うと、それ以前の写真技術の基本である、測光、つまり露出の正確さなどを意外と疑わない傾向にあるのではないかと想像しています(この1文、すっごい当を得てると思うよ)。
ボク自身、こんな経験があります。まだモノクロ写真を始めたばかりの頃です。
晴天の屋外で人物を撮るのにISO感度400のフィルムしか持ち合わせておらず、しかもカメラはシャッターの最高速が1000分の1秒と遅いものでした。
表現上、浅い被写界深度が欲しくて絞りをf2としたかったのですが、露出計が示すEI200としての測光値ではシャッター速度が2000分の1秒となっていました。
f2.8で1000分の1秒なら適正露出ですが、その時はf2にこだわってしまい、f2で1000分の1秒、つまり1段の露光過多で撮影。
たかが1段の露光過多ですし、ネガフィルムはラチチュードが広いので露光多めで宜しい、という言葉を信じていたんですね。問題なくプリントできるはずです。
ただ、その日は思いついて、念のために段階露光もしておきました。同じコマをf2.8の1000分の1秒でも撮影しておいたのです。
プリントしてみると、どのコマもからもちゃんとプリントできました。
ハイライトからシャドウまで同じように揃ったプリントです。
しかし、見た目の印象は異なっていました。明らかに、露光量の少ないコマの方が画面に締まりがあり、イキイキとして見えました。
なるほど確かに、トーンの揃ったちゃんとしたプリントは出来ましたが、1段露光過多のネガからはベストなプリントは出来ないんだと思いました。
その時はじめて、露光過多もやっぱりダメなんだと気がついたんですね。
すでにISO400のフィルムをEI200とし、現像量を少なくしてダイナミックレンジを広げる、つまりいわゆる「減感」まではしていましたが、それは主に露光不足によるシャドウディテールの喪失やハイライトの白トビを防ぐためのものでした。少々の露光過多は問題ないだろうと、その時点ではまだ甘く考えていたのです。
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