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ゾーンシステムもスポットメーターもグレーカードもフィルム濃度計も使わないキャリブレーション

それはさておき、同じ被写体の輝度幅、ダイナミックレンジを同じコントラストとして印画紙に再現しても、その中身は撮影時の露光量の違いによって異なることがおわかりになったでしょうか。
先の図にあった、暗めになる青と、明るめになる赤の、どちらが正解という事はありません。 それらは表現意図や好みによって使い分けられる個性であるわけです。
ただし、とあるフィルムのとある部分を理想とするならば、例え同じコントラストを再現したとしても、ベストな状態を得られる露光量はクリティカルであるはずです。 よく言われるラチチュードというのは、実際に同じ描写が出来る範囲ではありません。
なんどか同じ事をサイト内に書いていますが、望ましい描写のためにチューンナップされたモノクロの自家処理では、ラチチュードなるものはありません。 これがカラー写真ですと、意外と色の中の階調再現というのは気にされないものなので、特にカラーネガでのスナップ写真ではラチチュードというのもたしかに言えると思いますが、ハイクオリティのカラー写真や、モノトーンでの階調再現がほとんど全てであるモノクロ写真では、同じ階調を表していても、その表現がどう違うかというのが大切なのです。

ちなみに、ボク個人の好みは(今回の図は極端でしたが)青のように、フィルムの脚部をディープシャドウ部分に取り込んだ、プリント上に黒っぽい微妙な濃淡が多い表現です。そこで露光量は出来る限り少な目に抑える撮影を心がけています。
そのため、ちょっとでも露光量が多いネガだと、プリントして「締まりが無いなぁ」と思ってしまう一方、狙いより露光不足だといきなりディープシャドウのディテールを失ってしまうんですけどね。
逆に、明るい雰囲気を生む多めの露光が好きな方もおられるでしょう。

能書きはこれくらいにして
さて、前置きが長くなってしまいました。 え? 今までが前置きなのかって?
先に書いた、最初に理屈を少々、というのが今までの部分です(笑)。
いよいよ、実践的なキャリブレーションの方法です。

ゾーンシステム的な発想に基づくなら、撮影時に基準にすべき撮影感度は先に挙げたフィルムの特性曲線上で、意図した表現に使える最低限の濃度、つまり脚部の終わりちょっと手前くらい(ゾーンシステムで言うfb+f+0.15くらい)を基準にして決め、現像量(コントラスト)は印画紙のコントラストが求めるネガ濃度にハイライト側のネガ濃度を持っていく様に設定します。
これも繰り返しですが、「シャドウのために露光し、ハイライトのために現像する」、です。
なお、印画紙のコントラスト、つまり号数は、ネガの特性曲線上でハイライトのトーンセパレーションが極端に失われない範囲、つまり肩の部分の影響でハイライトがひどく軟調にならないところまでが合うように選ばれていると望ましいです。 ネガ濃度で、シャドウとなる濃度と、ハイライトの手頃な濃度の差が合う印画紙のコントラスト(ISOレンジ)という事です。
一般的には、シャドウとハイライトのネガ濃度差として0.9〜1.2程度、印画紙では2号から3号(ISOレンジ90〜120くらい)、という事になるかと思いますが、今回はそういう数字は一切使いませんのでご安心を。

さて、ゾーンシステム的なキャリブレーションというと、スポットメーターかTTLメーターが必須となります。そして実際の運用にはスポットメーターが必須です。
テストで入射光式露出計を使う場合はグレーカードを撮影するのですが、はっきり言って入射光を測ってグレーカードを正しく撮影するのは非常に難しいです。やめましょう。
幸いなことに、このページで紹介するキャリブレーション方法では、どんな露出計を使ってもどんな測光方法を使っても平気です。
基本的に、自分なりの測光方法が確立していて、安定した露光が出来ていればOKです。 あまりに初歩的なことなので言いたくありませんが、ちゃんと測光出来ない撮影技術のレベルだと、キャリブレーションもヘッタクレもないのでカンベンしてくださいね。
自信がない方は、出来の良い多分割評価測光を持ったAEカメラを1台調達して、それを基準にしてもいいかも知れません。 AE撮影はなにも恥ずかしい事じゃありませんよ。 断言しますが、ボク自身はAE大好きです。 入射光式露出計(はっきり言って難しいよ)を使った下手な測光より、確実なAEの方が写真を撮るためには偉いでしょ。

さて、キャリブレーションのやり方です。
基本的には、実際にありそうな場面を実際に撮影して、実際にプリントしてみるという、非常に実際的な手法です。
その実際の場面ですが、なにも同じような場面ばかり撮影するわけはないので、いくつか特徴的な場面をそれぞれテストしてみる必要があります。例えば次のようなモノ。
その1、普通の天気の普通の順光。
その2、曇天どんより。
その3、屋内、人工照明やルームライトがムーディー。
その4、夜の屋外、ネオンやヘッドライトがキラキラ。
ま、まずはその1、普通の屋外からですね。

人物写真を主に撮る人は人を撮ってテストすればいいわけですし、街角スナップを主に撮る人は街角を、自然風景を主に撮る人は・・・できれば大きめのフィルムでゾーンシステムを導入する、と。

撮影感度は、とりあえずISO感度通りでもいいですし、すでに別のEIを用いているフィルムならそれでもOKでしょう。
初めて使うフィルムや現像液なら、大体のところの目安として、ハッキリクッキリが好みならISO感度、滑らかトーンが好みならその半分ってところ。
実際に自分が撮りそうなシーンの代表例みたいなシーンを見つけだし、実際に自分がやる測光方法で測光し、その前後を段階露光します。
念のため、出来るだけ偏りのない被写体(シーン)が良いでしょう。 もちろん、例えば被写体が黒っぽくて、TTL測光では普通に考えてマイナス補正が必要なら、それもした上で露出を決めます。自分が普段やっている通りにね。
測光値そのままと、マイナス1EV、プラス1EV。 ひとつのシーンにたいして、前後1EVずつとか、あるいは前後0.5EVずつとかで、計3コマ撮影します。 計3コマでしたら、AEカメラの多くはAEB(自動段階露光)機能を持ってるので非常に楽チンです。ボクはこれですね。 EOS3の多分割評価測光に自動段階露光を組み合わせちゃいます。
余力があったら、プラスマイナス0.5EVと1EVなど、1シーンに5コマでも良いです。

さて、勿体ないようですが、この5コマなり3コマのセットを、フィルム上に次々繰り返していきます。
なんと、24枚撮りのフィルムであれば、5コマのセットを5セット弱、3コマのセットなら8セット、まったく同じシーンで使っちゃうのです。
経験から撮影感度や現像量を調整する場合、とあるフィルムが軟調だったので次のフィルムは現像時間を延ばしてみたとか、とあるフィルムが露光不足だったので次のフィルムから撮影感度を下げてみたとかやってる人が多いようですが、同じシーンを同じ時に撮影してサイドバイサイドで(並べて)比較しないとなんとも言えないのが実際です。 違うシーンを撮影しておきながら、それらを比べてどっちが露光過多でどっちが現像不足かなんて、比較する基準にならないですよね。

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