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測光なんかしない
ちょっと乱暴に聞こえてしまいますが、もともとはラチチュードの広いネガフィルムであること、プリントでのリカバリーがある程度利くことを前提に、それほどシビアな測光をしないのであれば、いっそのこと測光しなくても大して変わらない事もあり得ます。
実際問題として、普段撮影する中、どれくらいのシャッター速度と絞り値の組み合わせを使っているでしょうか。 例えば絞りをf8で、シャッター速度1/60秒、1/125秒、1/250秒。 ちゃんと測光はしているのだけれど、その結果、この3つでほとんど撮影しているかも知れません。
f8と1/125秒は、f5.6と1/250秒に同じです。 他にもいろいろ組み合わせがありますが、それを集約すると、「測光して求めた結果」というのは意外にも大雑把ないくつかの組み合わせでしかなくなってしまいます。
それはもちろん、絞りは1段単位ではなく中間もあり、カメラによってはシャッター速度が1/3段刻みだったり1段刻みだったりと違います。 シャッター速度も絞りも1/3段刻みでセットできる電子制御の最新カメラは、絞りが1/2段でシャッター速度は1段刻みしかセットできない古いカメラよりも緻密な露出制御が出来ることは明白です。
とことん緻密さを追求するならば、露出計を正しく使って細かく設定した方がいいに決まっていますが、1段や半段といった大雑把な設定しか出来ないカメラだったら、そもそもそんな細かい測光は意味を持たなくなってしまいます。 測光した結果をカメラの都合で丸めなくてはならない場合、例えば絞りが「f5.6と2/3」とか「f5.6と3/4」などと出た場合、これを「f5.6と1/2」にするのか「f8」にするのかという場合、ネガフィルムでは露光量が余計になる方に丸めるのが無難です。つまり「f5.6と1/2」。 露光が多めの方がプリントでカバーしやすいからですが、これはネガフィルムのラチチュードをアテにしているわけですよね。 カメラの機能上の都合で測光の精密さが役に立たなくなってしまうわけ。 それでも、そうしたカメラで素晴らしい写真は撮られているわけです。
1/2段刻みは難しいかも知れませんが、1段刻みだったら、経験を積んだり実際の撮影データを整理すれば測光しなくても大体分かってしまいます。 例えば、晴の日の順光ではこれくらいとか、薄曇りの日陰ではこれくらい、など。
露出計が内蔵されておらず、また絞りやシャッター速度の設定が細かくもない古いカメラであれば、こうした大雑把な露出決定方法もあながち乱暴とは言い切れないのです。 1/3段刻みの精密な露出決定をしたとして、そのカメラのシャッター速度はそんなに正確なんでしょうか、という疑問もありますでしょ。
関連記事:ライトバリューとエクスポージャーバリュー
こうした撮影方法について、とても良く書かれた記事がありますのでご紹介しておきます。
Fantastic Cameraさん「とても適当なスナップショット講座〜露出計を捨てて街に出よう〜

段階露光をする
ブラケッティングとも言いますが、同じシーンを少しずつ露出を替えて複数撮影する事を言います。 新しいカメラでは、自動的にこれを行えるものも多いですね。
例えば、測光値が「f8と1/250秒」と出たとして、それだけはなく、その前後を1/3段刻みや1/2段刻みなどでも撮影しておくというものです。 露出決定が少々正確さを欠いていた場合に備えての保険ですね。 前後1枚ずつ撮影すると、1カットに3コマのフィルムを消費してしまいますが、まぁ保険料って言うのは結構高いものなわけです。
写真入門の類では、ラチチュードが狭く露出にシビアさが求められるリバーサルフィルムでの撮影で奨められている事が多いかも知れませんが、ネガフィルムでも是非活用したい方法です。
ひとつには、先述したようにネガフィルムの能力を最大限に活かすには、ラチチュードという余力を残さないからです。 撮影感度の設定や現像方法・現像量により、クオリティ重視にプロセスをチューンナップしていたら、1/2段の誤差も避けたくなるもの。 1/3段の違いでも、特にディープシャドウの描出でプリント上で目に見える差を生んでしまいます。
もうひとつには、逆に、ネガフィルムのラチチュードをアテにした撮影で段階露光が活かせるというもの。 例えば先ほど出てきたような、そもそも測光なんかしないという撮影方法に段階露光を組み合わせます。
例えば晴の日の日中で、日向、明るい日陰、日陰、の3つに大雑把に明るさを分類すると、露出(露光量)は3種類だけ。 実際、晴から曇りにかけて、3〜4段くらいの幅しか普通はありません。 それぞれについて撮影する際に前後を段階露光してしまえば、それだけでほとんど間違いのない露光量を与えたネガを得られてしまうのです。 極端な話、1/2段刻みの異なる露光量で片っ端から撮影すれば、フィルム半分くらいのうちに必ず適正露出のコマがあるわけです。これは極端な例ですけどね。
大雑把に測光して、そのうえで段階露光すればほぼ確実と言って間違いありません。 面倒な測光から離れた自由な撮影もまた、ネガフィルムならではの楽しみ方でしょう。
このように、シビアな撮影とその逆の自由な撮影の両方で、段階露光はとても有用です。 自家処理しているモノクロフィルムなら、カラーリバーサルフィルムなどに比べれば圧倒的に安価です。 安心感だけでなく、実際に段階露光をしたおかげでより良いプリントを得られたという経験を重ねれば、保険料はまるで気にならなくなってきます。


まとめ
だいぶ長くなりましたのでそろそろまとめます。
もし、画質的なクオリティを優先してベストな結果を求めるならば、ネガフィルムはラチチュードが広いからというのも単なる一般論でしかなく、最高の画質のためにはラチチュードを捨てるというのもおわかりになるかと思います。 そしてそれは、フィルム現像を自分でコントロールできるモノクロ自家処理ならでは、でもあるわけです。
また、写真がプリントをもって最終形となる以上、目の前の被写体がプリント上にどう描かれるか、というのが大切なのもおわかりかと思います。
ヴィジュアライゼーション、ゾーンシステムといったものがキーワードになるでしょう。 測光から露光、フィルム現像、プリントにいたる全ての過程が連動している以上、測光だけが緻密でも、現像だけが正確でも、プリント技術だけが卓越していてもダメなわけです。 それぞれがバランスしていなければ意味がありません。
そして測光について言えば、スポット測光がそのための方法です。
一方で、それぞれについて誤差や寛容さを持たせる事は、ベストではないが失敗はしないベターな方法である事もわかるかと思います。 緻密で正確な測光といった手間と時間のかかる過程が、撮影機会や撮影の楽しみそのものをダメにしてしまう事もあるのです。
そうならないように、プリントでのリカバー、ネガフィルムのラチチュード、撮影時の段階露光といった、誤差を吸収する仕組みを利用することも正しい方向性です。
ベストなプリントのためのゾーンシステムや、それを実行する技術はたしかに高いレベルにありますが、それとはまた別に、濃度やコントラストが安定していないネガからのプリント、露光量のバラツキを吸収してプリントしやすいネガを作るフィルム現像といったものも、同じように高いレベルの技術です。
そうした自分の目的に応じて、技術レベルに応じて、測光というものも考えてみると良いかと思います。
お使いのカメラの都合、自分の写真の楽しみ方、カメラの楽しみ方によっても、可能な測光方法、向いている測光方法というのが自然と見えてくるはずですし、そもそも写真を撮るという目的のために理にかなった測光方法、それが出来るカメラという方向性も見えてくるでしょう。

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