前浴は是か非か
っと、これは宗教論争みたいな不毛な言い争いになりがちなネタなので、あいまいにしたいところなのだけれど・・・。
ちなみに、ボクは「前浴する派」です。
ただし、「前浴する派」だったと過去形になると思いますが。
前浴はメリットがたくさん、何年もやってるけど問題ない。
前浴はやらないことにしているが全く問題ない。
実に不毛である。
なので、やってて問題がないならやればいいし、やらなくて問題がないならやらなくていい。
それが前浴である。
前浴のメリット
第一に、現像ムラの防止が上げられる。
現像液を投入する前にフィルムを濡らすことで、現像初期に現像液がフィルムに馴染みやすくする目的で前浴をする。
処理温度への調整も前浴の目的である。ボクの場合はこれが理由だった。
現像液の温度はあらかじめ調整するが、タンク・リール・フィルムの温度は未調整。
温度を調整した前浴でタンクの中身も処理温度に合わせておく事が出来る。
なお、フィルムによっては前浴を排出すると色が付いている事があるが、これはアンチハレーション層が洗い出されたためで、それを前浴のメリットに上げる人もいるが誤り。意味がない。
まず現像ムラだが、たしかに前浴によって現像ムラを抑える効果がある。
が、本来、均等な現像を得る為に行うのは攪拌である。
攪拌が正しく行われていれば、前浴なしでも現像ムラは起きない。
現像ムラの防止のために前浴をするというのは攪拌の問題に目をつぶって他へ責任転嫁しているだけの逃避である。
また、現在のフィルムはフィルム自体にムラ防止のための薬品が含まれていて、前浴なしを前提に設計されている。
前浴によってこの薬品が洗い出されてしまい、その効果は失われてしまう。
イルフォードが公式に「前浴はすべきではない」としている理由はコレである。
ムラ防止剤をムラ防止のための前浴でチャラにするのは「意味がない」。
また、この様な細工がされている新しいフィルムは昔のフィルムより乳剤面が薄く、現像初期の現像ムラが起きにくい。
「前浴すべし」は古いハナシであって、そのまま現在まで惰性で信仰されている神話のようなものだ、と言う人は、古い設計のフィルムなら前浴をすべきであったろうが今は・・・という論調になるのが典型的なパターンであろう。
温度調整については、かなり前浴のメリットがあるとボク自身も考えている。
が、現像処理に際しての温度管理のベストな方法は「室温を処理温度に合わせる」である。
現像タンクや薬品の温度だけを調整するのは一時しのぎに過ぎない。
現像液を注入する前にタンクを外から処理温度に合わせた水に浸けて温度を調整しておけば、フィルムやリールによる現像液の温度変化は微細である。
また、現像中は温度維持のために水を張った容器にタンクを浸けておくと思うが、それによってごくわずかに変化した温度などすぐに取り戻せる。
実際に計ってみるといい。
温度調整のための前浴も、別の方法によって代換え出来るし、よりよい作業環境のためにもそうすべきである。
以上は、前浴をしなくてもイイ理由だが、前浴は次善の策であるという言い方なので「前浴する派」の人は気を悪くするかも知れない。御勘弁。
では、しなくてもイイ理由から一歩踏み込んで、前浴はしない方がイイという理由を考えてみる。
これが実は「意味がない」という一点になるのだ。
特別に現像ムラが発生しやすいロータリープロセッシングでは、かのイルフォードですらも前浴すべしと勧めている。
が、ロータリープロセッシングが黒白フィルムにとってベストな結果のために推奨されるモノではないことはおわかりかと思う。
ボクはロータリープロセッシングに魅力を全く感じないので、この点を考慮すること自体に「意味がない」のだが。
シートフィルムの皿現像では現像初期にフィルム同士が癒着するのを防ぐために前浴が効果的であると勧める向きがある。
ボクは皿現像もそうそうに見限ったので「意味がない」が、皿現像で大いに問題になるフィルムのスクラッチについて言えば、前浴をすることでスクラッチの危険が増えるのは明白である。
前浴を避けられるなら避けるべきであろう。
富士フイルムでは現像液にウェッティングエージェント(ドライウェル)を少量加えてこの癒着を防ぐというアイデアを提供している。
そしてなにより
「しなくてもイイならしない」のがベストな結果への王道であることが決め手だ。
「意味がない」事をすれば、それはただフィルムに害を与えるだけなのだ。
現像液はpH緩衝されているが、前浴に使っている水の素性はどうだろうか。
水質・pHは毎回安定しているか、不純物はないか。
意味がない事のためにフィルムを濡らすのは意味があるのか?
イルフォードの様なフィルムメーカーは、標準的な現像処理の方法を公開してるから、だれもが初めはそれを読んで自家処理の参考にすると思う。
が、同時にアーカイバル目的での処理方法も別途記載するのは何故だろうか。
アーカイバル目的の処理では、水洗などのフィルムを濡らしている時間(ウェッティングタイム)をギリギリまで切りつめているのは何故だろうか。
言うまでもなくそれは、フィルムが濡れている間は乳剤面が痛みやすいからである。
フィルムが濡れている状態はフィルムにとって望ましい時間では絶対にないのだ。
前浴をしなくてもいい、つまり、する事に「意味がない」のなら、それは明らかにすべきではないのである。
逆に「やっても害が見えないからやってもイイ」というハナシは絶対に成り立たない。
ちなみに、ボクが「前浴する派」になったのは、初心者丸出しの頃に現像ムラを経験して、その時に前浴で防げると見聞きしたからであった。
その後、温度調整のためにするべきだと思いこんだ。
それがずっと続いていたわけだ。
が、フィルムの現像についてあれこれ考えたり試したりしているウチに、現像ムラを防ぐための前浴は未熟な攪拌からの逃避に過ぎないと気づき、また温度調整についても考えが変わった。
最近では、タンク現像ではムラの出やすい代表みたいなコンビプランの4x5現像タンクを使っているが、前浴なしで現像ムラはない。
なるほど最初のうちはいくらか経験したが、攪拌を工夫する事であっさり解決した。
ついでと言っては何だが、サイト内に2浴現像についての記事があるのでその点にも触れておくと、まず低pHグループの2浴現像処理では第一浴ではフィルムに現像液を染み込ませるのが目的であるから、その前に水を染み込ませるのはナンセンスであり、前浴はすべきではない。
高pHの処方ではその意味合いは薄れるが、する意味がないという点では今までに述べたことと同様である。
繰り返すが、「前浴は是か非か」は宗教論争みたいなものである。
だからボクも「すべき」「すべきではない」とは言いたくない。
各自が信じることをすればイイだけのことだと思う。
強いて言えば、すべきなのは現像ムラが特別発生しやすい8x10などの大判のロータリープロセッシングや、結果を安定させるのが難しい染色現像(ボクが勝手に作った日本語かもしんない、ゴメン)など特殊な例で、ごく普通のロールフィルムのタンク現像や、ボクの経験では4x5のタンク現像も含めて、「しなくていい」のではないかと思う。
ボクの考えはあくまでも、「しなくていい事はすべきではない」というだけのハナシなのだが・・・。
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