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ゾーンシステム不要論
フィルム現像のコントロールを個別に行わないのであれば、ここまでがゾーンシステムで出来る範囲、という風にも言う事が出来ます。
というよりも、ここまでの事ならば、ゾーンシステムもなにも関係なく、写真撮影、特にモノクロネガでの撮影では当たり前の事です。
最初のページで、ボクがゾーンシステムの存在を知る以前から、というよりモノクロ写真を始める前から、スポット測光での露出決定をしていたというのは、だいたいここまでは含んでいました。
「ゾーン」や「ビジュアライゼーション」という言葉は知りませんでしたが、フィルムには再現できるダイナミックレンジがあり、スポット測光で被写体のとある部分を測光して露出補正をかければ、どこがどうなるという予測が正しく行えることは分かっていたわけです(なんだか自慢みたいでゴメンナサイ)。
それはさておき、フィルム現像を個別に調整しない、1本のロールフィルムの中に異なるコントラストの被写体を撮影する場合などは、やはりここまでというのが普通でしょう。
それではゾーンシステムの意味がありませんが、別の見方をすれば、ハイライト側を成り行きに任せて、プリント時に調整するという方法で、目的とするクオリティが十分に得られるのであれば、なにもこれ以上踏み込む必要はありません。
ゾーンシステムが考え出された当時には一般的ではなかった、多階調紙がスタンダードになったり、あるいはフィルムの性能が上がっているなど、感剤の進歩によって今やゾーンシステムは必要ない、という言い方を時々耳にします。
ボクは、この段階まではゾーンシステムではなくそれ以前だと思っていますので、ハイライトを成り行きに任せてプリント時に調整という方法が、その目的にとって十分なクオリティを与えてくれるのであれば、ゾーンシステムは不要なんだと思います。
標準現像をやや軟調に設定しておけば、つまり標準のダイナミックレンジを広めに想定しておけば、かなりの範囲で現像調整は不要ですし露出のバラツキも吸収できます。
実際、ボクもスナップ撮影ではそうしていますし、バラツキのあるネガをプリントでカバーするテクニックというのも、ゾーンシステムに負けず劣らず高い技術であると信じていますから、これを書いているボク自身はそれほど熱心なゾーンシステム信者ではないんですね。
しかし、これだけは明言できるのは、ゾーンシステムを学び、ある程度実行してみることは、銀塩モノクロ写真技術を良く理解するためのベストな方法である、という事です。
また、ハイライトを成り行きに任せて十分なクオリティのプリントが出来るのであれば、ゾーンシステムによってはさらに、クオリティの高いプリントが出来て然るべきです。
そしてなにより、フィルム現像を自分でコントロール出来る、あるいはしなくてはならないモノクロ写真ですから、ここで留まっていては面白くないわけです。
N現像、N-現像、N+現像
ここからがゾーンシステムの面白いところです。
これまでに何度も出てきた、11段階のゾーンスケール、9EVの被写体ダイナミックレンジ、7EVの有効被写体輝度域は、次のような物で、これに対応した標準現像を「ノーマル現像」、または「N現像」と呼びます。
N現像
| z 0 | z 1 | Z 2 | z 3 | z 4 | z 5 | z 6 | z 7 | Z 8 | z 9 | z10 |
| | | | | | | | | | | |
| 質感を持たせたい被写体の輝度域 = 7EV | |
| ○ | |
| 質感を持った印画紙上のトーンレンジ | |
| | | | | | | | |
しかし、被写体のコントラストが標準よりも高く、有効被写体輝度域が8EV、ダイナミックレンジが10EVあった場合には、1EVのコントラストを減らす為に、フィルム現像の時間を短くし、次のように修整する必要があります。
1EVのコントラストを軽減する現像を、「N-1」現像と言います。
N-1現像
| z 0 | z 1 | Z 2 | z 3 | z 4 | z 5 | z 6 | z 7 | Z 8 | z 9 | z10 |
| | | | | | | | | | | |
| 質感を持たせたい被写体の輝度域 = 8EV | |
| << 現像を減らす | |
| 質感を持った印画紙上のトーンレンジ | |
| | | | | | | | |
「N-1現像」の現像時間を求める方法は簡単で、標準現像のテストを行ったときと同様の手順により、ダイナミックレンジが10EVになる現像時間を求める事で概ね得られますが、運用上の使い勝手は、質感を得られる明るいハイライトであるゾーン8を基準にした方が良いです。
無地の被写体により、測光値-4EVでゾーン1濃度を印画紙上で得られる撮影感度、測光値+4EVでゾーン8濃度を得られる現像時間です。
当然、標準現像よりは現像時間が短くなりますので、場合によってはゾーン1濃度を得るために撮影感度を若干下げる必要があるかも知れません。
その場合、N-1現像においては、実際の撮影時にも撮影感度が標準現像とは異なることになります。
「N-1」だけではなく、逆の「N+1」はもちろん、あるいは「N+2」といった、調整幅の大きな現像パターンが必要になるかも知れません。
N+1現像
| z 0 | z 1 | Z 2 | z 3 | z 4 | z 5 | z 6 | z 7 | Z 8 | z 9 | z10 |
| | | | | | | | | |
| 質感を持たせたい被写体の輝度域 = 6EV | |
| 現像を増やす >> | |
| 質感を持った印画紙上のトーンレンジ | |
| | | | | | | | |
N+2現像
| z 0 | z 1 | Z 2 | z 3 | z 4 | z 5 | z 6 | z 7 | Z 8 | z 9 | z10 |
| | | | | | | | |
| 質感を持たせたい被写体の輝度域 = 5EV | |
| 現像を増やす >> | |
| 質感を持った印画紙上のトーンレンジ | |
| | | | | | | | |
被写体のダイナミックレンジが標準モデル通りであれそれ以外であれ、基準としているゾーン2にしてもゾーン8にしても、それぞれ1EVという広さを持っていますので、ある程度の誤差は必ず発生しますし、標準から外れるほどに誤差は大きくなるでしょう。
これは当然の事なので、こうした誤差はプリント段階で吸収する必要が出て来ます。
しかし、ハイライトを完全に成り行きに任せてしまい、プリント時に全てを調整するよりも、フィルム現像時に大部分を調整してしまった方が負担が少なく、画質的には遙かに有利です。
N+2現像が求められるときに、仮にN+1現像しかしなかったとしても、N現像そのままよりはずっとプリント時での負荷が少ないのです。
しかし、ネガフィルムの特性上、ハイライト側に比べると、シャドウ側はそれほど大きく現像によって変化するわけではありません。
ゾーン4ではいくらかズレも目立ちますが、ゾーン2からゾーン3にかけては、測光値-3EVから-2EVのあたりとある程度しっかりリンクしています。
ここでも、シャドウ基準で露出を決める必然性が示されているわけですが、これはフィルム感度をディープシャドウを基点にして決めているので当然です。
中間調を基準にしてフィルム感度を求めているならば、被写体のダイナミックレンジが変化しても中間調は中間調です。
しかしそれでは、コントラストの高い被写体に対してはディープシャドウが露光不足になりますから、ネガフィルムでは好ましい方法では無いのです。
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