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Subject Brightness Range
今回このコーナーでは、フィルム濃度計などを使わずに確実なテストを行えるよう、印画紙上ではっきりと識別しやすいゾーン1とゾーン9を使って、ダイナミックレンジ基準でコントラストを決めましたが、実際に写真表現上で重要なのはゾーン2からゾーン8に至る有効被写体輝度域です。
ぎりぎり質感のわかるディープシャドウであるゾーン2から始まって、3、4、5、6、7、ぎりぎり質感のわかるハイライトであるゾーン8まで、計7ゾーンを意味します。
これまでの話において、標準現像(N現像)では印画紙上で、これら7ゾーンが7ゾーンになるように調整されています。これを「SBR7」と称します。
「N現像」が「SBR7」なわけですね。
晴天屋外の風景写真ではSBR7が標準として適切だとしても、もしかすると自分の撮影領域ではSBR6というのが平均的な被写体、ということがあるかもしれません。
その場合はSBR6を「N」現像としてシステムを構築してもいいでしょう。
とりあえず、ここではSBR7を「N」として話を進めます。
さて、仮に、被写体上でゾーン2とゾーン8に相当する部分を測光して、その差が(それぞれを含んで)7EVであれば、SBRは7ですから、標準現像で処理すれば印画紙にストレートに再現できます。
しかし、2カ所の測光の結果SBRが6しか無かったら、「N+1現像」によってネガ上のコントラストを上げ、逆にSBRが8あったら、「N-1現像」によってネガ上のコントラストを下げます。
SBR7に対応した標準現像である「N現像」でゾーン1基準の感度が200だったとしても、「N-1現像」では160に下がるかもしれません。
そこで、「N-1現像」でのテストで感度が200ではなく160となっていたのなら、まず被写体のSBRが8である事を確認した後、露出計の設定感度を160に下げ、測光・撮影する事になります。
逆に「N+1現像」では240の感度が得られるのなら、SBR6の被写体であれば、露出計の設定をEI240として測光・撮影し、「N+1現像」を行うことになります。
当然、被写体の輝度幅(SBR)が異なるカットは、別々に処理しなくてはなりません。
大判のシートフィルムであれば、撮影時にメモをつけ、現像時にはSBRごとにシートをより分けて現像します。
中判の場合、フィルムバック交換式のカメラ(ハッセルブラッドやブロニカなどの一眼レフに多い)であれば、「N現像」用のフィルムバック、「N-1用」のフィルムバックなど、撮影途中で交換して運用することも可能です。
35ミリのユーザーの中には、同じカメラを複数使い、被写体の輝度幅に応じて使い分ける、という事を実行している方もおられるそうです。
それができなくても、晴れの日と曇りの日では平均的なSBRは明らかに異なりますから、ロールフィルム1本まるまるをSBRいくつに対して処理するか、という考え方は無意味ではありませんよね。
測光・撮影
繰り返しになりますが、スポット測光が基準となります。
まず、撮影に使うべきフィルム感度が現像調整によって変化する以上、まずは被写体の輝度幅(SBR)を把握して、現像を「N」で行うのか「N+1」や「N-1」なのかを決めなくてはなりません。
質感を伴うが詳細はわからないディープシャドウであるゾーン2と、質感を保つぎりぎりの明るいハイライトであるゾーン8をそれぞれスポット測光し、その差がそれぞれを含んで7EVであったら標準現像、6EVだったら「N+1現像」、8EVだったら「N-1現像」、というのは説明しました。
測るべきゾーン2が見あたらなかったら、ゾーン3とゾーン8の差を調べて6EVなら標準、という様にずらして考えても大丈夫です。
この時、被写体の輝度幅というのを絶対の物と考えていては、まだまだゾーンシステムの肝を掴んでいるとはいえません。
印画紙上で、自分がゾーン2にしたい部分をゾーン2として測光、印画紙上で自分がゾーン8にしたい部分をゾーン8として測光するのです。
それがビジュアライゼーションというもので、それを具現化するための仕組みとしてゾーンシステムがある、というのを思い出してください。
さて、被写体の輝度幅から現像量が決まれば、正しい撮影感度も決まります。
露出計の設定値をそれにあわせて、今度は露出のための測光を行います。
この時点では、すでに被写体のゾーンが印画紙上でそれに対応した濃度になるよう調整された組み合わせに設定されています。
従って、例えば被写体上のゾーン3をスポット測光して、測光値に対して-2EVの補正をかけて撮影すれば、そこは印画紙上で容易にゾーン3相当の濃度にできます。
そして被写体のゾーン2は印画紙上でもゾーン2、被写体のゾーン5は印画紙上でもゾーン5です。
測光ポイントから離れた部分、例えばゾーン1やゾーン9と言ったあたりは、ある程度成り行きに成りがちですが、だいたいにおいて予想の範囲内に入るはずです。
ある程度の成り行きを許容するのであれば、シャドウ基準にこだわらず、もっとも自分が重要視する被写体上のゾーンをスポット測光し、露出計が指し示すゾーン5基準の測光値に対して必要分の補正をかけて撮影するのも良いです。
ゾーン8を最重要視するのなら、ゾーン8を測光して+3EVの補正、ゾーン4を最重要視するのなら、ゾーン4をスポット測光して-1EV補正して撮影。
どうですか、非常に単純ではありませんか?
あとは予定通り、「N」なり「N+」や「N-」といった、SBRに対応したフィルム現像をすれば、プリントしやすいネガを得られる、というわけです。
面倒だけれど単純。それがゾーンシステムというようにボクは思っています。
もちろん、これですべてが解決するわけではありませんが、被写体、ネガフィルム、印画紙をつなぐラインというのは、こうやってコントロールされる、というわけなのです。
モノクロ写真の仕組みを理解するためにも、一応知っておいて損はないと思いますが、いかがでしたか。
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